給与か外注費か(給与所得か事業所得か)

税金定番の、悩ましい問題です。

お金を払う側にとっては、消費税が減らせるかどうか。もらう側にとっては給与所得控除が使えるか(または損益通算ができるか)どうか。

いや、本当は悩むポイント、ないはずなんです。

その人との間に交わしたのが、雇用(労働)契約書なのか、業務委託契約書なのか。基本、これで判定できます。

雇用契約にせよ、業務委託契約にせよ、その契約の本来の趣旨のとおりに実施されていれば、そのとおりに判定されます。

業務委託契約書があっても給与と認定される場合

これは、従業員を退職させ、外注(個人事業主)に切り替えた場合にありうる話です。

業務委託契約書は交わしたのに外注費と認められない場合とは、退職の前後で、その個人の働き方・対価の支払い方に何ら変化がない場合です。

形式だけを整えても、だめなんです。実質が変わっていなければ。

経理で外注費で処理しようと、個人に請求書を出させていようと、雇われていたときと同じ働き方をさせていたら、給与と認定される可能性が高くなります。

消費税や源泉所得税の追加の納税が発生するなど、予期しない出費に悩まされるでしょう。

公式な5つの判定基準はあるが

契約書がなく、雇用のような、業務委託のような、曖昧な関係であるときに、判定が難しくなります。実際にはこういう例も多いのだと思います。

そういう場合は、公式で例に挙げられている次の5つの要素をチェックします。雇用・給与となる場合は、次の例です。

  • 代わりの人を出せず、自分が行かなければならないなら、給与
  • 勤務地が決まっていて、時給(または定額)で計算されるなら、給与
  • 仕事のやり方に自由度がないなら、給与
  • 失敗してもお金がもらえるなら、給与
  • 高額な資材や仕事道具(車や建築材料など)がただで使えれば、給与

過去の争いの例を見ると、5つのうち4つがNoだから、外注費/事業所得だったという判断もありました。給与的な要素(資材の支給や時間・場所の拘束)があっても、です。

この5つはあくまで例であって、実際には様々な要素で判定されています。主張したい方の、理由・根拠が多いほうが勝つ! というものです。

逆に、外注費/事業所得になった例としては、個人が会社から独立して働いているという証拠のほうが多い場合です。

  • 会社でなく、自分の屋号で領収書を発行していた
  • 収支をノートに記録していた
  • 会社に請求書・領収書を出していた
  • 他の会社とも同様の仕事をしていた
  • 仕事を断ることができた
  • 事業所得で申告していた
  • 赤字になるリスクがあった
  • 失敗したときの責任は個人にあった
  • 相談について上から指示されず、自分の判断で回答できた
  • 従業員にならないか、という誘いを断っていた

会社サイド

  • 外注費で経理していた
  • 源泉所得税や社会保険料の天引きをしていなかった
  • 給与台帳にその個人を載せていなかった
  • タイムカードを打たせていなかった
  • 一定の収入を保証していなかった
  • 契約外の仕事をやらせていなかった

もちろん、形式だけ外注費で経理していても、外注になるわけではありません。個人のほうは給料と認識していて、給与所得で申告しているということもありえます。

昔からある事例としては

フリーペーパーを発行する広告会社の場合

チラシの折り込みの仕事を、外注費で経理していた。

でも、折り込みの仕事は事細かに手順が決まっており、その人に事務所に来てもらい、夕方5時までいてもらっていた。

これは、給与認定されるリスクが高いですね。

一方、折り込みされたフリーペーパーのポスティング(郵便受けに入れること)も、外注費で経理していた。

ポスティングしてくれる人からは、配った枚数×単価で請求書をもらっていた。

その人には、チラシが折り込まれたフリーペーパーの束を届けるだけで、配る方法の指定はしなかった。

対外的な発行日の関係で、一定期間に配りおえるという拘束はあるが、その期間内なら何日に配ってもよかった。

こっちは、外注費が通る可能性が高いです。(いまだと、こういう人たちからインボイスがもらえなくて、消費税の負担は増えてしまうのでしょうが)

士業団体の無料相談会に従事した場合

弁護士、司法書士、税理士といったお仕事の方は、所属団体の社会貢献活動として無料相談に出ることがあります。

これは、働く場所を指定されて、9時5時くらいの間、相談業務に従事することになります。事前に研修もあります。

さっきの理論からすると、なんだか給与所得みたいですね?

でも、個人事業主が自己の判断・責任で従事しているので、これは士業団体にとっての外注費、士業の個人にとっての事業所得です。

これは、発注する士業団体から、「インボイスの登録番号持ってますか?」と確認されることも、傍証となります(インボイスの確認をしたから外注費になるわけではありません)。

参考にしていただければ幸いです。わからなくなってしまったら、税理士にご相談を。

編集後記

  • 無料のうちにコロナワクチン5回目を。
  • NHK-FM ジャズマイルスVと、ジャズ・トゥナイトの菊地成孔とあまちゃんの人との対談(来週もある)を、らじるらじるで。