親子間など親しい間柄での土地の売買の場合、低額譲渡による贈与税課税の問題があります。
「単に贈与すると贈与税がかかるから、名目的な金額でも有料で売って、贈与税を回避しよう(ひいては相続税も)」と考える人が出てくるので、法律で先回りしています。
取引の実態が贈与と認定される場合、実際の代金と、時価との差額を贈与したとみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。
その贈与に証明なり認定をするのは税務署の仕事ですから、個人としては、売買の前には確証が持てないことになります。
じゃあ、路線価で売ればいいのかというと、必ずしもOKではない
「時価と言われても分からないよ」と思って、事前にわかるデータとして、「国税庁ホームページにある路線価を使おう」と考える方もいるかもしれません。
路線価(1㎡当たりいくら)×土地面積で売っても、それなりの金額にはなります。
しかも国税庁が出してるデータだし……と思うかもしれませんが、路線価は時価とはいいがたいです。
時価は、親族間売買や、売り急ぎなどの事情がなく、相場を把握した者同士による、ふつうの取引で決まる金額です。
具体的にいえば、不動産屋さんに頼んで、査定してもらい、売りに出し、しばらくしてから、実際に決まった金額が時価です。
対して路線価は、時価の一種ではありますが、土地を(無料で)相続した人たちに平等に相続税を払ってもらうための評価額なので、売買の時価とはそもそも違います。
時価(市場価格)と路線価との差額を利用して路線価で安く売り、実質的に贈与したと認められるリスクがあります。
時価と路線価の違いを実際に検証してみた
最近、家に入ってきた横浜市港南区内の土地のチラシを見て、丁目までの住所と Google ストリートビューから場所を特定し、その土地の路線価を計算してみました。
それと販売価格との差を出したのが下の表です。金額は特定を避けるため、1千万円単位にしています。
住所 | 販売価格 | 路線価(概算) | 比率 |
土地A | 44,000,000 | 34,000,000 | 77% |
土地B | 44,000,000 | 26,000,000 | 59% |
土地C・角地 | 35,000,000 | 21,000,000 | 60% |
土地D・準角地 | 40,000,000 | 23,000,000 | 58% |
いずれも古家有(旧耐震基準)で、建物の評価額はほぼないのかなと。
更地渡しと明示していあるのは土地Bだけです。解体費用は向こう持ちということで、路線価比で高いのかなあと推測されます。
とはいえこのとおり、不動産のチラシの価格と路線価とでは、けっこう違うので、路線価で売れば贈与とみなされないかというと、なんとも言えないことになるのです。
個人間の売買の場合、時価の1/2以上ならいいよ! というルールもありませんので。
※販売価格と路線価との関係は、エリアによって大きく異なりますので、横浜市港南区以外でもこのような比率になるわけではありません。
チラシの価格=成約価格でもない
チラシの価格は、路線価よりはよっぽど時価に近いはずです。
ただ、売り主の事情もあり、この金額で売れるとは限りません。多少安くなっても早く売りたい人もいるでしょうし、売るに至る事情によっては売りにくくなり値下げする人もいるでしょう。
査定の金額のままなのか、査定額よりちょっと強気で売っているのか、この土地のチラシが何回目なのか、実際に売買交渉が不動産屋さん間で行われてさらに下がるケースもあります。
最終的な成約価格が分かる参考情報としては、下記があります。駅徒歩〇分などの条件も分かるので、多少相場観はつかめるかと思います。(国土交通省によるアンケートまたはレインズ掲載の価格)
このような統計をご自分の土地の売買に当てはめていただく際には、条件がそろっていること、平米単価で比較することも検討しましょう。
予期せぬ贈与税課税(買ってくれた親族に課税)を防ぐには、相場を知り、「相場で売りたい!(ふところがあったまるし)」という気持ちになっていただくのがよろしいかと思います。
今日の発声練習
腹式呼吸により息を細く吐き出す練習で1分21秒達成。小さく声を出す場合は42秒。1分くらいは水に潜れるってことか……。