法人を作ると、社長の給料から社会保険料を控除する処理が必要になります。
ここでは、社会保険料は、協会けんぽの健康保険料・介護保険料及び厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金とします。
社長の給料が0の会社ならいいのですが(のちのち、年金事務所から問い合わせの手紙が来たら、その旨回答すれば)、役員報酬を取りたい場合は、社長1人の会社でも、社会保険の加入が義務です。
給与計算の際、源泉所得税や住民税のように天引きをするのですが、この経理がややこしいので、概略を解説します。

給与計算で控除額を入力
給与計算ソフトで、社会保険料の控除額を入力するのですが、大きな給与の変動がなければ、1年間変わりません。
定時決定後の9月分の社会保険料(10月に払う給与から控除し、10月末までに納めるもの)から、1年間継続となります。→定時決定(算定基礎届)|日本年金機構
もちろん、役員報酬を大幅に上げたら、その月が3カ月続いたら、随時改定の手続きをして、4カ月目の給料から控除額がアップします。→随時改定(月額変更届)|日本年金機構
その他、賞与を払った場合は、支給額の千円未満切捨て額に料率をかけた額を控除します(払ってから5日以内に賞与支払届を提出します)。→従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構
雇用保険料と異なり、毎月金額が変わるものではありません。
ただし、40歳以上になったら、介護保険料が加わるので増えます(賞与も同様です)。
→介護保険の被保険者から外れるまたは被保険者になるための手続き|日本年金機構
また、65歳以上で介護保険料がなくなり、70歳以上で厚生年金保険料がなくなり、75歳以上で健康保険料もなくなります(後期高齢者医療制度へ)。
いくら控除すればいいのかは、年金事務所とやりとりしつつ、ご自分で手続きをして算定するのが原則ですが、難しい場合は、社会保険労務士に有料で相談してはと思います。
手続きのつど依頼する、または顧問を依頼することで、給与計算ソフトに入力するための「標準報酬月額」などを教えてもらえます。
何もないのに、毎月控除額が変わっていたらおかしいですし、何年も同じ金額というのもおかしいです(料率が変わるため)。
給料から控除される社会保険料が正しいか、定期的にチェックしましょう。
会計ソフトの入力
給料の支払い時は、社会保険料は預り金の一部なります。
預り金の内訳、補助科目として「社会保険料」を設定しておきます。
役員報酬/複合
複合/預り金(社会保険料)
複合/普通預金
源泉所得税の預り金は、月末にも天引きした額が残ったままになりますが、原則として社会保険料は、残りません。
前月分の社会保険料を、今月支払う給与から控除し、今月末までに納めるからです。
→納付期限|日本年金機構
自動引落としにしてもらうこともできます。このほうが、手間は減ります。
→ケース3:健康保険料・厚生年金保険料を口座振替によって納付したいとき|日本年金機構
インターネット専業銀行は、イオン銀行とGMOあおぞらネット銀行しか対応していないので、注意しましょう。
引落額は、その月の下旬(20日以降)に郵送される納入告知書で分かります。月末の口座の残高には注意しましょう。
引落時の仕訳は、簡略な方法では次のようになります。
複合/普通預金
預り金(社会保険料)/複合
法定福利費/複合 ※月次決算をしている場合は、未払費用(後述)
ただし、月末が土日祝など休日の場合は、翌営業日が納付期限です。
そのため、社会保険料の預り金が1カ月分(その月の給料から控除した額)残ることになります。
月次決算、本決算時の未払法定福利費
社会保険料の会社負担分は、法定福利費という費用です。
社会保険加入者がいるだけで、会社の債務が確定しているため、引落前のタイミングで費用にできます。
法定福利費/未払費用
月次決算を行う場合は、この仕訳を入れたほうが、その月の人件費の精度が高まります。
特に、賞与を払った月は、法定福利費が一気に増えます(賞与引当金とともに、月次で少しずつ計上する方法もあります)。
なお、預り金の額よりも、法定福利費のほうが多くなるのが正しいです。子ども・子育て拠出金は全額会社負担のためです。
社会保険料は、手続きも経理も複雑ですが、役所や専門家の力を借りつつ、適切に行う必要があります。
控除額を間違えると、社長の年末調整にも影響してしまいますので(正しい控除額が、市社会保険料控除の対象になるからです)。
私は税理士なので、社会保険の手続き等は行えないのですが、社会保険料の月次決算へ反映させるサポートは行えます。
社会保険料が損益計算書に与えるインパクト(給与額のおよそ15%)は、かなり大きいですから。
近況報告
休日は対戦型格闘ゲームのオンライン対戦をしたり、本を読んだり、子どもと遊んだり。
少し仕事もしています。
1日1新:Aqua Voice
1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細