『君の名は。』レビュー 夢はガードを甘くする

ドリーミーな映画です。主人公たちは繰り返し夢の世界をさまよう。流れ続けるRADWINPS。上映時間107分が生み出すスピードの速さ。二人が色々忘れてしまうのは、夜中に見た夢を忘れてしまうのと同じです。

二人の夢の世界を見続けているうちに、私たちもまた夢を見ているような気持ちになっていきます。スクリーン以外のことはすべて忘れてしまいます(この極致にたどり着けない方は、お酒を飲んでから見るといいです)。

夢の中では、古い記憶が流れ出してきます。それは5年前の震災の記憶です。「あのとき、津波が来ることをあらかじめ知っていたなら、みんな死なずに済んだのに」。大勢の人が思っても口に出さない、心の奥底にたどり着いたことが、この映画の大ヒットにつながったのではと思います。

記憶とともに、私たちも二人の時代に若返り、いびつでも真っすぐだった当時の心持ちと、ストーリーとがリンクして、ラストへと向かっていくのです。