「雲のむこう、約束の場所」は、初期の傑作に位置づけられると思います。初期の傑作とは何か? 村上春樹でいえば『羊をめぐる冒険』で、エルジェでいえば『タンタンの冒険 青い蓮』。物語が語られ始めました。
新海誠監督のシチュエーションフェチっぷりも強化。好きな背景は、前作「ほしのこえ」でも出尽くしていましたが、出したいシーンを(必然性が薄くても)出すのはこの辺りからでしょうか。
ナディアやエヴァの影響もいよいよ強めに。春樹の初期作品がフィリップ・マーロウものの影響があったような感じですね。今作で出てくる春樹作品は『アフターダーク』で、同作の状況をちょっと借りている関係で、引用元を明示した感じですかね。
前作同様の前向きさに、代償を払うことによる不完全ハッピーエンドが加わりました。基本的に、同じ話を何度も繰り返すところが村上春樹的でもあります。内容としては、「君の名は。」「天気の子」に近づきつつあります。