法人化したら給与計算する 気をつけること

法人を持っているフリーランスの方が身の回りにいらっしゃると、気になるもの。

色々魅力は感じるけれど、法人化したら、やることは増えます。
その一つが、給与計算です。

個人のときは必要なかった給与計算が、法人化すると、あくまで法人と個人(社長)の2人の関係となり、人間は1人でも、組織になります。

会社からお給料(役員報酬)をもらう生活が始まりますが、そのお給料を計算するのも自分です。
給与計算にあたって気をつけることを書いてみました。

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役員報酬の振込金額が変わる要因

役員報酬の給与計算は、それでも楽なほうです。

まず、毎月の支給額が同じ金額になります。
タイムカードの記録に時給単価をかけたり、最低賃金の改正を気にしたりする必要はありません。
給与支給額に、会社設立時の株主総会で決めた月額を毎月入れるだけです。

ただ、振込金額が毎月同じというわけではないので、注意が必要です。
振込金額が変わる原因は、いくつかあります。

  • 通勤手当
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 源泉所得税
  • 特別徴収の住民税
  • 役員借入金(立替経費)の支払額
  • 役員貸付金の回収額

社長は、役員なので、雇用保険料の徴収は原則ありません。

また、住民税も、お給料を払うのが2人までなら、普通徴収にすることができます。
健康保険料は75歳まで、厚生年金保険料は70歳まで天引きします。
(75歳以上の役員しかいない会社で、住民税を普通徴収にすると、源泉所得税しか天引きされないことになり、計算は楽になります)

社会保険料は、標準報酬月額にもとづきます。
社長1人だけなら、ご自分で手続きすることも可能です。年金事務所でよく相談して、やり方を確認しておきましょう。
社会保険労務士に、定時決定のつど、依頼することもできます。

社会保険に未加入の法人には、年金事務所から「おたずね」や調査があるので、手続きは必ず行いましょう。

通勤手当

社長にも、自宅から会社までの通勤手当を出すことができます。
これは、実際に社長が定期代を払った金額と一致するようにします。
概算はNGです。税務調査でも、社長の自宅住所と会社所在地との通勤経路をもとに確認されます。

払った金額を超えて支給した分があると、社長に源泉所得税がかかります。

バス代・電車代は料金改定があります。消費税率が変更されたときにも変わります。
見直しを忘れないようにしましょう。

自動車通勤の場合は、通勤距離に応じて一定額(非課税限度額)までが、源泉所得税がかかりません。
参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

キョリ測などで、自宅から会社までの距離を計測して、源泉所得税がかからない金額を調べておきましょう。

ガソリン代の実費相当額を計算したら、非課税限度額を超える場合もあるでしょう。
その場合も、実費相当額を支給できないというわけではありません。
非課税限度額を超えた金額について、社長に源泉所得税はかかりますが、支給可能です。

なお、2025年中に、この非課税限度額のアップが予定されています(物価高に対応)。
有利な改正なので、最新の情報に注意しましょう。
通勤手当の非課税限度額の改正について|国税庁

役員貸付金・借入金に注意

先ほど、法人化すると「法人」と「社長(自然人)」の2人の組織になると書きました。

会社のお金と、個人のお金は、別ものになります。

個人のときのように、売上金をすぐに生活費に使ったりはできません。
毎月定期的にもらう役員報酬の、手取り分から使うことになります。

年1回の株主総会でしか、変更することはできません。
(これも変更はできますが、税金面で大損するのでおすすめしません)

それ以上使おうとすると、役員貸付金として、会社から社長に貸すことになります。

ただ、会社は損をする取引はしませんので、社長から利子を取ることになります(法人の利益になります)。

また、役員貸付金がいつまでも回収されないと(社長が会社に返済しないと)、本当に貸したのか、怪しくなってきます。
「貸した」と言えるためには、「返した」事実が必要です。

社長としては、会社に定期的に返すようにし、決算時には全額返済していることが望ましいです。
(決算書を銀行に見せるとき、役員貸付金が残っていると、公私の区別ができていないとして、印象が悪いです)

役員借入金は、個人のときの「事業主借」と同じものです。
家計から仕事のものを買ったときに使う勘定科目です。

前月分の、現金・PayPay・社長個人のカード払いの経費を1カ月分集計しておき、翌月の給与支給日に給与にプラスして、社長の個人口座に振り込む(会社から社長に返済する)など、ルールを決めておきましょう。

フリーランスの法人であれば、小口現金勘定を設けず、役員借入金でレシートのある支払いを管理する方が楽です。

未返済の役員貸付金・役員借入金があると、freee会計では「修正待ちリスト」としてアラートを出してくれます。
こういった機能も活用しましょう。

近況報告

休日なので請求事務、ルーティン。家の掃除など。

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