総会の通知が届く季節になりました。6月は大手企業もそうですが、非営利団体の総会のシーズンでもあります。
NPO法人や一般社団法人・一般財団法人の役員(理事・監事)については、みなさん手弁当でされていて、役員報酬は無給ということもあります。
そんな役員の方々に、総会(同時開催する理事会)に来ていただいたのだから、謝金や、お車代を支給していることがあるかもしれません。
法人と、個人である理事・監事については、雇用関係ではないのですが、法人から役員にお金が払われることは、実質、お給料に似たところがあります。
なので、職員・バイトに対する給与と同様、謝金などについても、源泉徴収するか、しないかという問題が出てきます。

役員出席のつど、定額の謝金・手当を支給している場合
定款に役員の報酬の定めがあったり、理事会(NPO法人、一般社団法人)や評議員会(一般財団法人)で報酬を決議していたりする場合、その規程にもとづき役員に払うものは、原則として給与です。
つまり、源泉徴収の対象となります。
ただし、先ほども申し上げたように、小規模な団体も多いのが非営利組織の世界です。
定款などで、「無報酬」を定めている団体も多いのではないでしょうか。
そうした団体であっても、理事会や評議員会に出席いただいた役員の方には、そのつど、団体の内部規程に基づいて、「謝金(手当、日当なども同じ) 出席1回あたり〇千円」と決めて、一律に、定額を払っていることもあります。
この、「〇千円」という定額支給するものは、原則として源泉徴収が必要なのですが、例外もあります。
次の要件をすべて満たしている場合です。
- 無報酬の役員であること
- 定額の謝金の支給ほかに、実費弁償の支給がないこと
- 団体から役員に支給する謝金が、年1万円以下であること
この場合ですと、内部規程にもとづく「〇千円」について、源泉徴収は必要ありません。満額渡すことができます。
一般法人などでは、通常年2回から4回の理事会等を開催します。
謝金が1回2,000円×4回=年8,000円の支給でしたら、1万円以下ですので、源泉徴収は必要ありません。(所基通28-7「委員手当等」の準用)
これらは、形式的には謝金・日当・手当という名称だけれども、少額なので、実質的には交通費実費の弁償であり、役員に所得は生じていない(純資産が増加していない)と考えることができるからです。
旅費規程にもとづき、交通費実費を支給している場合
団体によっては、内部の旅費規程が整備されていて、役員の出席のつど、公共交通機関の交通費実費を支給する、というところもあるでしょう。
役員になっていただいた方に、最寄り駅をお聞きして、理事会等の会場までの交通費を調べて、その実費を支給するという方法を取っている場合。
このケースについては、やはり、源泉徴収の必要はありません(所基通28-8「地方自治法の規定による費用の弁償」の準用)。
交通費のほか、役員の方が負担した経費について、レシートを元に団体が実費精算した場合も同様です。
役員が、別にトクしていないからです。
源泉徴収が必要な場合
上記の2つのケースの要件を満たしていない、謝金や実費を超える支給額が年1万円超ある場合は、源泉徴収が必要です。
役員から「扶養控除等異動申告書」の提出を受けていない場合は、源泉徴収税額表の「日額表・乙欄」で源泉徴収をします。
この場合、支給額の3.063%を源泉徴収しますから、通常、税額が生じることになります。
なお、源泉徴収しなくていい支給だけの団体だったとしても、法人の源泉徴収の義務自体がなくなるわけではありません。
これらに該当しない支払があれば、源泉徴収をして、翌月10日(原則)までに納付することが必要です。
法人税や消費税の申告をしていないこれらの非営利団体でも、源泉所得税の税務調査ということはありえます(私も見聞きしたことがあります)。
こうした交通費の支給についての源泉徴収事務について、確認をしておきましょう。
参考文献:税のしるべ 2018年9月10日号「所得税、公益法人の理事等に支給する交通費と源泉徴収」大蔵財務協会
編集後記
FMヨコハマ(東京地方税理士会広報部)の「教えて税理士さん」最後の出演。昔、放送部(視聴覚委員会)でアナウンスをやっていた人間にとって、放送の仕事に関われて、よかったです。OBにはプロのアナウンサーになった方もいました。
1日1新:
ハヤシクレープ(横浜市港南区)
Zoomデスクトップレコーディング、クラウドレコーディング
Googleドキュメント音声入力

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細