売上高1000万円前後で気にしたい「基準期間の課税売上高」とは?

売上高1000万円が見えてくると、突然現れるのが消費税です。

インボイス登録をしていない会社でも、売上が1000万円を超えたら、2年後に消費税の申告・納付が必要になります。

「「今年は売上が伸びて、超えそうだな」というときから、消費税についての知識が必要になります。

忍者のように、自分が資本だと消費税が重い

利益がなくてもかかる税金

これまでの納税は、基本、利益にかかるものでした。なので、赤字ならほとんどかからなかったはずです。

それが、消費税は赤字でもかかるときがあります。自分の売上をベースに税金がかかるからです。

ほとんどの場合、請求額÷1.1×0.1が、納税額の最大値です。(食品・新聞は÷1.08×0.08)

所得にかかる税金のように、ここから引けるものもあります。それが、他人の売上です。

納税額の最大値から、他人の売上、つまり購買先から請求された金額÷1.1×0.1を引くことができます。

他人の売上というのがポイントで、他人の売上というイメージのない人件費・減価償却費・利子などは引けません。

引ける費用が少ないので、消費税の計算は赤字になりにくく、納税額が多いのです。

特に、自分だけが価値を生み出す、雇っている人が収益を上げるサービス業の負担が大きくなります。

基準期間の課税売上高と、納税額

売上が1000万円を超えた年の2年後から、消費税の納税が必要と言いました。

これは、納税が始まると、その分手取りが減るので、事前に価格の改定や経費の見直しができるようにしているためです。

たまたま調子がよい年で、1100万円の売上があり、その2年後は下がって売上が660万円になっても、その660万円に消費税がかかります。10%なら最大60万円。

2年前の売上高(この場合、1100万円)を、「基準期間の課税売上高」といいます。これは、実際に消費税の納税をする年度の税額には影響しません。この10%の100万円を納めるわけではないのです。

単に、申告が必要かどうか(課税事業者になるか、免税事業者になるか)の判定に使われるだけです。

そのため、売上が660万円で申告・納税をしたとしたら、そのさらに2年後は、免税事業者に戻ります。

売上高が1000万円前後を行き来する会社は、納税が必要になったり、必要なくなったりを繰り返すことになります。

人件費(自分・他人)だけが資本の会社がすべきこと

先ほど、消費税の計算上、引ける経費は少ないと言いました。

会社の経費の多くを占める人件費(雇用)は、引けないのです。経費のほとんどが給料手当や法定福利費の場合、何もしないと、売上÷1.1×0.1のほとんどを納税することになります。

そういう人的サービスが主体の会社の場合、売上が1000万円を超えた時点で、その決算・申告後に、課税事業者届出書(基準期間用)と、簡易課税制度選択届出書を必ず出しておきましょう。

「2026年10月(が含まれる事業年度)まで、2割特例が使えるって聞いたけど?」

それが、売上1000万円超の会社は、使えないのです。2割特例は、売上が1000万円を超えることがない事業者向けの制度です。

簡易課税制度選択届出書は、消費税の納税が始まる年度の前に提出しないと、効果が出ません。

仕入や設備投資ではなく、人的な投資(経費)が売上に占める割合が多い場合、「事前」の提出の有無で納税額も、申告の手間も大幅に変わります。

1回でも年間売上1000万円超になったら、消費税の世界では、一人前の事業者です。気を引き締めていきましょう。

編集後記

1日1新:一般財団法人の評議委員会にオブザーバー参加

参照条文

  • 消費税法附則第51条の2第6項の規定
  • 法施行令附則第18条の規定
  • 法附則第44条第4項
  • 法第37条第1項