クラウドファンディング、というものが出始めてもう10数年になります。
クラウドファンディング(クラファン)とは、ある事業を実現したい人が、インターネット(プラットフォーム)を使って広く資金提供を呼びかけ、その事業の実現を望む多くの支援者の共感を得て、資金提供を受けるものです。
この記事では、事業(開業)のためのクラファンに限定してお話しします。

リターンを設定するのがクラウドファンディングの基本
とはいえ、共感だけで資金提供をするという支援者は、なかなか現れません。
通常は、「リターン」と呼ばれる見返りを用意します。
リターンの設定を必須としているプラットフォームもあります。
リターンを約束している以上、クラウドファンディング収入を「寄付」や「贈与」として見る余地はなくなります。
事業で行う商品販売、サービス提供と同じことです。
代金を前金でもらっているだけです。
(ただ目標額に達しないともらえないだけ ※もらえるケースもあります)
クラウドファンディングで開業する場合の注意点をまとめました。
クラファンで始めるなら消費者向けの事業を
事業は、消費者向けか(B2C)事業者向けか(B2B)に分かれます。
クラウドファンディングで資金を集めるなら、どちらの事業がいいでしょうか?
私は税理士なので、税金の観点から言うと、クラファンには消費者向けの事業がおすすめです。
クラウドファンディング収入に、消費税がかからないからです。
いま、事業者向けの事業をしていると、インボイス登録を求められることがあります。
「登録していない場合、消費税分を払わない」という会社も現実にあったりします。
インボイス登録して、リターンを設定してクラファンをする以上、クラウドファンディング収入に消費税がかかります。
ただでもらった収入には消費税はかからないのですが、「ただ」とは言えないからです。
そのため、必要な費用を積算して目標額を設定して、めでたくその金額の入金があり、それを経費に払ってしまったあとに、さらに消費税の納税が必要になってしまいます。
開業年度なら、2割特例で納税は少なくなり、10%(食品なら8%)まるごとは払いません。
ですが、B2Bでインボイス登録が前提の場合、消費税(納税分)もコストとして見込んで目標額を設定する必要があります。
その点、消費者向けの事業なら、「インボイスください」と言ってくる人はいませんので、消費税の申告納税コストはありません。
収支の予測もしやすいですし、目標額も下げることができます。
相殺に注意
目標額を実現したら、開業する人に、プラットフォームが指定する手数料を差し引いた金額が入金されます。
リターンが前提のクラウドファンディング収入は、会計ソフトに入力する上では、原則として、売上高です。
ただし、例外としては、リターンの返送が年度をまたいだ場合です。
この場合は前受金となり、売上高にはなりません。
問題は金額です。
手数料を差し引かれて入金された場合、入金額を売上高に入力していないでしょうか?
これは、手数料を差し引かれる前の総額を売上高にするのが正解です。
借)普通預金 900 貸)売上高 1,000
借)支払手数料 100
または、次の方法でも同じです。仕訳をCSVインポートするならこちらです。
借)普通預金 1,000 貸)売上高 1,000
借)支払手数料 100 貸)普通預金 100
借)普通預金 900 貸)売上高 900 は間違いだということです。
消費税の納税がなければ同じではないか? と思うかもしれません。
売上高900では、消費税の納税が必要な場合に、税額が少なすぎになりますが、利益は変わらないはずだと。
ただ、利益を間違う場合もあります。
リターンを送るのが翌年度になってしまった場合です。
貸)前受金 900 とすると、今期の経費が少なくなりすぎます(税金が納めすぎになる)。
プラットフォームに払う決済手数料 100 が支払手数料に入らないからです。
翌期にリターンを発送したら、借)前受金 貸)売上高 900 となりますが、今度は売上高が小さくなりすぎます(税金が足りなくなる)。
原則として、お金の動きだけ(純額)を会計ソフトに入力するのではなく、売上高と経費とを両方、総額で入力するようにしましょう。
経理の基本は、クラウドファンディングという新しい取引ができた場合でも変わらないです。
近況報告
顧問のお客様の仕事、相続税関係の仕事、必要な電話、e-Tax開始届をRPA(Power Automate)で。
1日1新:税理士会の会報誌のコラムを執筆

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細