30年前はゲームセンターがたくさんありました。
ゲームセンターだけでなく、スーパーや酒屋、レンタルショップの店頭にも筐体をよく見かけたものです。
私はいまだにゲームセンターで、90年代の対戦型格闘ゲームを遊んでいます。20年くらいブランクはありましたが。
格ゲー新作としては、KOF2001(ネオジオROM版)以来24年ぶりに買った餓狼伝説 City of the Wolves も家でプレイしてはいます。
しかし、ゲームセンターで、ギャラリーの歓声を聞きながらゲームをするのは、また格別です。
私は単なるゲーセンを利用している客側の人間ですが、反対側には経営者の方がいらっしゃいます。
ゲームセンターを経営するにあたり、税務・会計で気をつけたいことをまとめてみました。

個人でやるか、法人でやるか
これは、個人で始めるのがおすすめです。
まず、ゲームセンターは一般消費者向けの商売ですから、インボイス登録する必要がありません。
売上高1千万円以下である間は、消費税の申告・納税は必要ありません。
1千万円を超えても、その翌年までは消費税の免税事業者でいられます。
翌年中に法人成りをすれば、個人で1千万円を超えていても、法人としては過去の売上がないので、免税事業者として開始できます。(資本金1000万円未満。経営する他の法人(5億円超の売上)がない場合)
なるべく消費税の納税がない期間を長く取りたいものです。
課税事業者になれば、売上が立たず投資だけの年度で還付を受けられるかもしれませんが、その後の消費税の申告納税コストを考えると、免税で済むならそれがいいです。
コインいっこいれてもらうビジネスでは、消費税を転嫁するのが難しいので……。
ただ、売上高1000万円の判定は、中古筐体の売却収入(税込)など、インカム以外の収入も含めますので、集計もれがないように注意が必要です。
もし、課税事業者になりそうであれば、簡易課税(処理が楽。税区分は10%5種※。下取りは4種)と一般課税(還付がある)との事前選択の検討も必要です。
※日本標準産業分類 生活関連サービス業,娯楽業>娯楽業>ゲームセンター>ゲームセンター
また、個人であれば、設立費用や、赤字であってもかかる法人県民税・法人市民税もかかりませんし、クラウド会計ソフトの料金も安いですし、法人に比べて支出を抑えられます。
Excel等で売上・経費のデータを整備していれば、総勘定元帳や試算表の作成をやってくれる税理士もいます(私も対応しています)。
その場合、ご自身では会計ソフトを導入する必要がなく、その分のコストは浮くことになります。
10万円以上のゲーム筐体・基盤の税務
ゲームセンターを始めたら、最初は必ず税込経理です。
その後、消費税の納税義務が発生したら、税抜経理も選べますが、分かりやすいのは税込経理でしょう。
ゲーム基盤・筐体仕入れ時、単価によって、処理が変わります(個人・青色申告の場合)
- 30万円以上…減価償却資産
- 20万円以上30万円未満…減価償却資産 or 経費
- 10万円以上20万円未満…減価償却資産 or 一括償却資産 or 経費
- 10万円未満…経費
税抜経理だと、この金額の判定を税抜金額で行えるので有利ともいえます。
しかし、最終的には払った金額が経費になるので、払った金額がそのまま会計データの数字になる税込経理をおすすめしています。
30万円以上は、資産計上するしかありませんし、個人の場合は、10万円未満は経費にするしかありません。
20万円以上30万円未満、10万円以上20万円未満は選択肢があります。
ゲームセンターの開業にあたって、借入をしているのでしたら、30万円未満であっても資産計上(工具器具備品)したほうがいいです。
20万円未満であれば、積極的に一括償却資産を選びたいものです。
というのは、決算書の利益がプラス寄りになるからです。
一括償却資産にすれば、償却資産の申告の対象外にできますので、将来的な固定資産税支払を減らすことにもつながります。
ゲームセンターで稼働する機器の法定耐用年数は3年です。
(器具及び備品>娯楽又はスポーツ器具及び興行又は演劇用具>スポーツ具)
ただ、それは新品の話で、コストを抑えるために中古での購入、オールドゲームであれば中古しかないですし、中古がメインになるでしょう。
1年以上経過したものは、中古耐用年数として2年になります。
ただこれも、20万円未満なら一括償却資産としてあえて3年で償却し、銀行対策で見た目の利益を増やすのも手です。
借入をしておらず、利益が出ているのであれば、30万円未満は経費、30万円以上で中古なら2年での償却をすればよいでしょう。
減価償却資産として処理すると、下取りに出したときの会計処理も面倒になります。
一括償却資産や、30万円未満 or 10万円未満の少額減価償却資産(経費)として処理していれば、下取り収入をそのまま固定資産売却益として処理すればいいので、あとが楽です。
会計は、期中は税務と違ってよい。筐体・基盤を仕入で処理してみよう
以上は、税務上の話です。決算、申告書作成時には、上記の制限があります。
ですが、会計ソフト上で、どのように入力するかは、ゲームセンター経営者の自由です。
税務上は2~3年で経費になるとしても、もうその金額を払ってしまったのですから、経営者の感覚的には筐体・基盤代は経費、仕入れです。「筐体仕入れ」という言葉もあります。
それなのに、推移表(損益計算書を月別に並べたもの)を見ても、経費処理しなかった支出額が経費として出てこないので、会計ソフトで数字を見ても分かりにくくなります。
払った金額が、貸借対照表(工具器具備品)に行ったり、損益計算書(消耗品費)に行ったりしているからです。
損益計算書を、分かりやすく収支計算書として見たいのであれば、ゲーム筐体・基盤・MVSソフトなどの勘定科目は、「仕入」(売上原価項目)にしてみてはどうでしょうか。
資産にすべきものは固定資産台帳に登録しておき、決算のときに仕入勘定を工具器具備品 or 消耗品費に振り替える方法です。
決算整理で、あらためて減価償却費を1年分計上します。
これら、税務上の処理に戻すことを忘れてしまうと、納税が少なくなりすぎるので、要注意ですが。
金額の大きいものを扱う設備産業であるゲームセンター。
お金があるのか、ないのかの判断を間違えてしまうことはリスクです。
ご自分に分かりやすい経理を目指してみましょう。
近況報告
子どもたちの付き添いで大船へ。
帰宅後はブログ。お客様からの郵便物を受け取る。
横浜市長選の選挙公報も入ってきました。
1日1新:魔法陣 相続税 体験版

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細