NPO法人の給与(役員報酬)と業務委託

NPO法人を設立する前は、多くの場合、個人で活動されていたと思います。

活動が広がるにつれて、法人を設立した。

設立後、間もないときは、個人との切り替えで迷うところもあると思います。
特に、給与と業務委託の関係はむずかしいところです。

いくつか、迷いそうなケースを解説し、また、2026年の源泉徴収事務の変更点についてお話しします。

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理事長(代表理事)個人に仕事の依頼があった場合

個人として非営利活動をしていたときに、お客様の名簿に代表理事の方のお名前が載っており、そこから依頼が来るということがあろうかと思います。

法人にではなく、理事個人に仕事を頼まれたのだから、個人でお金を受けとり、個人で確定申告をすればいいか?

いや、これは、いったん法人として受けて、理事へはお給料(役員報酬)として報いるべきでしょう。

この話の流れからすると、個人に依頼された仕事の内容は、いま、NPO法人の業務として行っている可能性が高いです。

すると、理事個人の収入/NPO法人の収入というふうに分けるのは、一般的ではありません。

法人を設立した時点で、従来の関係者には、設立した旨をお伝えし、名簿には個人名ではなく、法人名・代表者名・法人の電話番号等を記載していただくように、お伝えすることをおすすめします。

それでも、過去の実績から、代表個人にどんどん連絡が来る。
でも役員報酬は理事会の決議を経て、年1回しか変えられない。

という場合であっても、それだけ代表理事が仕事をしたのですから、理事会でも当然、翌年度の報酬引き上げについて賛同が得られるのではないでしょうか。

役員の報酬は、法人が社会に認められた結果、あとから上がるものと考えましょう。
個人の資金繰りは、最初きついかもしれませんが、個人事業の収入としてではなく、法人からの給料として受け取るほうが、所得税は減ります。

法人設立後、人に仕事を頼みたくなった場合

それだけ、代表者に外向きの仕事が集中すると、内部事務全般を任せたい人が必要になってくるはずです。

これまで、非営利活動に積極的に協力いただいてきた人の中から、内向きの仕事を任せられそうな人に、週何日か、任せてみるのも方法です。

とはいえ、NPO法人には貸事務所を持たないところも多いので、出勤してもらうことになじまない場合もあります。
また、メール、Zoom、Dropbox等で、その方の自宅で仕事をしてもらうことも可能になっています。

そうすると、雇用と業務委託との境がだんだんあいまいになってきます。

それとは別に、つど、イベントなどに来ていただき、手伝いをしてもらうこともあるでしょう。

とにかく、週の決まった日の時間に、事務のほか、いま、お願いしたい仕事を依頼したい。

という場合は、通常は、雇用・給与ということになります。

業務委託というのは、何か、やってもらう仕事を切り出して、その期日までの完成をお願いするものです。

理事の指示にしたがって、事前に決めておけない仕事を種々頼みたいのであれば、雇用関係となります。

労働保険はハローワーク、社会保険は年金事務所に相談にいくこともあるでしょうし、社会保険労務士会の無料相談を利用してもよいでしょう。最低賃金の問題もあります。

ただ、税金的には、最低賃金未満の給与だからといって、給与として認めないというわけではありません。
実態が、ここでお話ししたような働き方なら、いくらでも給与として源泉徴収事務の対象になります。

2026年からの源泉徴収事務は、がらっと変わる

そもそも、代表理事が役員報酬をもらうようにすることからも、給与の事務、源泉徴収事務が発生します。

人を雇えば、その人の分も。また、年末調整といった仕事も増えています。

ちなみに、来年2026年から、源泉徴収しなくていい給与の水準が、大きく上がっています。

月給として支払う場合、令和8年分の扶養控除等申告書を提出した方については、「総支給額-通勤手当ー社会保険料」(課税支給額)の金額が、105,000円未満になっています。
以前のイメージだと、88,000円未満だったところです。

令和8年分 源泉徴収税額表|国税庁

また、その日だけの手伝いで、理事・役員・委員などの2カ月超の任期もない方には、「日額表・丙欄」が使えます。

本来は港湾労働者・工事現場の作業員のような日雇いの人を想定しているものですが、似たような働き方のバイト代の源泉徴収税額の計算に使えます。

これも、2025年中までは日額9,200円未満だと源泉徴収税額0円だったのが、2026年からは日額9,800円未満に。
最低賃金の上昇による基礎控除・給与所得控除のアップが、ここに影響しています。

なお、バイト代を払う方のうちに、NPO法人がメインの勤務先でなく、扶養控除等申告書を提出してもらっていない方(乙蘭)については、月給として払おうが、日給として払おうが、必ず源泉徴収税額が発生します。

人手がないうちは、源泉所得税の納付は、納期の特例の手続きをして、納付を年2回(7月10日期限、翌年1月20日期限)に減らすようにしましょう。

A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

10月中に申請書を提出して、11月末まで何も言われなければ、12月に払う分から、納期の特例の対象となります。

結果的に翌月ですが、1月20日期限になります。1月に払う分から6月に払う分の源泉所得税をまとめて、7月10日に払います。

10月、11月に払った分は、まだ特例の対象外ですので、それぞれ、11月10日、12月10日に納税する必要があります。

NPO法人で、収益事業に該当するものがなく、対価としていただくものの総額が1千万円を超えず、インボイス登録をする必要がないのであれば、源泉徴収事務をしっかり行うことが重要です。

税金に縁がないように思っても、税務署も源泉所得税の調査はNPO法人などに行いますので。

近況報告

Steam Deckで対戦型格闘ゲームをしていて、外付けディスプレイが映らなくなる、コントローラーが効かなくなるトラブルにしょっちゅう見舞われていました。
これは、スティックコントローラーでプレイする振動で、USB-Cの接続がずれているためのようでした。
コントローラーを膝の上に置くか、Steam Deckを別の机の上に置くことで解決しました。

1日1新:Brian Eno アンビエント2/ザ・プラトウ・オブ・ミラー