飲食店に棚卸は必要か お酒はどうカウントするか

私は税理士ですが、飲食店の税務顧問はしていません。
お互い、予算的にも合わないでしょうし、私はひとりで税理士事務所をやっていますので、取引量の多さに対応することもなかなか難しいかなと思っています。

顧問料は、よそより高いと感じるかもしれませんが、うちでは税理士が直接対応するために、こういう料金でやっています。

ただ、飲食店から仕事で単発のご相談は受けています。

また、個人的に、ジャズ喫茶やリスニングバーなど特徴ある飲食店を利用するのは好きです。
(ジャズ喫茶は全国40数店舗、訪問しました)

今日は、飲食店の経理・税務で気をつけたい、棚卸についてまとめました。

棚卸について、わからないことがあれば本で調べてみましょう

棚卸はやるべきか

棚卸については、よく話題になります。
私は個人的に棚卸資産が好きで、研究しています。近々届く本も楽しみで……。

さて、棚卸とは、期末時点で、まだ売れていない商品が何個あるか、ひとつ、ふたつ、みっつと、実際の数を数えることです。
在庫をカウントすることを、棚卸といいます。

その数に、その商品を最後に買ったときの単価をかけると、在庫の金額が求まります。
(税務署に何か届出をしたことがなければ、この「最終仕入原価法」で計算します)

商品ごとに単価は異なるでしょうから、商品ごとに掛け算を行うのが棚卸です。

原則として、最低でも年1回(年度末)はやるべきです。

損益計算書には、売上原価の計算のところで「期末商品棚卸高」に計上され、同額が貸借対照表の「棚卸資産」に乗ってきます。

期末商品棚卸高は、売上原価(経費)をマイナスする効果があり、在庫が多ければ多いほど、利益は増えることになります。

これまで、この欄が空欄だったり、0円だったりした場合は、今年からでも棚卸をやってみましょう。

棚卸を行う理由は

いままで、やっていなかったけれど、特に指摘を受けたことはない。

という方は、まだ開業してそれほど経過していないのではないでしょうか。

飲食店なら、年末の12月28日頃に最終の仕入れがあって(酒屋さんが休んでしまうから)、書き入れ時の年末まで営業して……という流れでしょう。

お金の動きや数字を見てれば、今年はありがたいことに利益が多そうだな、と思った場合。

棚卸をしなくてもいいということになると、年末も営業しているスーパーで食品や酒類を買い込んで経費にすれば、利益を減らすことができてしまいます。

そのため、そういうことは、できないようになっています。
食品や酒類が経費にできるのは、売れた分だけなのです。

売れれば、商品は出て行ってしまいます。
価値あるものが消えたということで、経費になります。

価値あるものが消えていないならば、経費ではなく、同じ借方側の、資産(棚卸資産)になります。
これは、全額が次年度の経費になります。
今期の経費にはならないのです。

お酒の棚卸はどうすればいいか

お酒については、ボトルで仕入れ、ショットで提供する以上、ボトルの中に1/2とか、1/3とか、残っているものです。

これをどう考えるか。
単価×1/2、1/3とするのかどうか。

これは、独立する前に、勤めていた飲食店(長年やっていて、従業員もいるタイプ)のやり方を参考にするのがよいと思います。

あるお店では、栓を抜いたものは在庫としてカウントしないと決めていたそうです(人から聞いた話です)。

つまり、仕入れて、まだ誰も飲んでいないもの(1円も売上が立っていないもの)は、経費にしない。

この基準は、分かりやすくて、私もいいと思います。
反対にいうと、オーダーがあって栓を抜いたものは経費になるのですが、それに対応する売上も立っているわけですので。

ご自分の経験から、もっといい方法をご存じなら、そのやり方をまずは真似てみます。

小さな飲食店では、厳密にやろうとしても人手も時間も足りないでしょう。
それでも、できる範囲で棚卸をしていれば、今期の利益の精度が高まっていきます。

決算書に棚卸の金額を載せて、その根拠となる年度末時点の棚卸表を整備していれば(写真を撮っておいてもいいかもしれません)、必要があって決算書を他人に見せたとしても、その心証は悪いものにはならないはずです。

棚卸をすることで、利益率がより正確に計算でき、ということは、利益を出すためには、逆算していくらの売上が必要なのか、というご自分に役立つ情報が手に入ることになるのです。

これは、毎月の月末とか、半年に一度やってもかまいせん。決算に備えて、いちど練習してみるのも手です。

編集後記

会計業務について、単発相談のご依頼があり、請求書を送付。
もう1件の税務の単発相談も進行中。
顧問のお客様に情報提供のメールをお送りして、夜は相続税・贈与税のセミナーに。

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