記帳代行と一口にいっても3つの段階がある

税理士事務所のメニューを眺めていると、

  • 記帳代行は+いくら
  • 100仕訳までいくら、以降は1仕訳110円
  • 記帳代行は受けていません
  • 顧問料に記帳代行を含みます

などと書いてあります。

「記帳代行」、これは業界用語ですが、会計ソフトの入力を税理士が行うことです。
一般的には記帳というと、通帳の記帳(ATMで)のことですが。

反対に、会社が自分で行うことを自計化と呼ぶことがあります。
もともと、会計ソフトが扱えない会社に代わって、税理士事務所(会計事務所と同義)が会計ソフトへの入力を行うことが一般的でした。
それをやめて会社が行うこととしたので、自計「化」と呼んだのでしょう。

記帳代行といっても、実は、いろんな意味がある言葉です。
記帳代行について整理してみました。

横浜税関 資料展示室(手前はカスタム君)

1段階目:レシート・領収書・請求書の入力代行

「丸投げ」とも呼ばれます。

科目別に整理したレシートなどを税理士に送れば、入力してもらえるサービスです。
資料をそのまま送るタイプの記帳代行です。

会社なり、事業をしていると総勘定元帳という帳簿の作成は義務ですから、義務をこなすために依頼するサービスです。

銀行からの借入もないと、月次の試算表を求められることもありませんので、直近の会計データのニーズもない場合に、このメニューを選びます。

丸投げだと、その結果作成される月次の会計データの完成は遅くなり、アドバイスのようなこともあまり受けられないだろうというデメリットもあります。
その分料金も高くなるでしょう。

税理士と会う頻度も年1回くらいになるのではないかと(会ったことがない、というケースも)。

そうなってしまうのは、会社側で、何ら、帳簿を作成していないことによるものです。
ここでは、帳簿のもととなるもの(領収書や請求書など……証憑といいます)を整理・保管し、税理士に定期的に送付することが会社の仕事となります。

1人しかいないフリーランスの個人・法人は、事務に取れる時間がない関係で、やむを得ず丸投げを依頼することもあるでしょう。

会社と税理士、1:9くらいの役割分担です。

2段階目:現金出納帳、預金データ、給与台帳、買掛帳・売掛帳の入力代行

会社は、関係先が増えてくると、税理士とも税務署とも銀行とも関係なく、自分のためにつけている帳簿なり、Excel資料があるものです。

現金で払う経費や、給料日までに計算する必要がある給与台帳、お客様からの入金の管理、仕入先・外注先への支払いの管理のために、何等かの帳簿を作成しているはずです。

入金と出金さえしっかり整理・管理できていれば会社は回るので、会社にとっては会計ソフトの入力だけが必要ない(義務ですが)状態になっている場合。

これは、この会社の管理のためにつけている帳簿を、税理士に送ることで、会計ソフトの入力部分だけを任せることになります。
送るものが少なくなるので、ファイル共有やメール添付で渡しやすくなります。

これを記帳代行と呼ぶ場合もあれば、呼ばない場合もあるのではないかと。
一般的な税務顧問とは、こういった関係を指すことが多いでしょう。

会社が、インボイス登録番号や消費税率・金額・日付・取引先の把握に責任を持ち、税理士は会計ソフトの入力に責任を持つという役割分担です。

会社と税理士、4:6くらいの役割分担です。
自社である程度経理ができていれば、ちょうどいいバランスです。

すると、月次の試算表の完成は早まり(銀行へ見せることも可能です)、税理士のアドバイスや訪問も受けられるようになります。

3段階目:修正仕訳、決算整理仕訳の入力

ここまでいくと、一般的に、記帳代行とは呼ばなくなります。
いわゆる自計化(税理士側の目線の言葉です)の状態です。

会社が自分で経理や会計ソフトの入力をするというのは、ある意味当たり前のことで、税理士に依頼しない会社はみんな自社で経理をしています。

経理担当者を雇うか、社長自身、社長の配偶者が経理をする(従業員に数字を見せたくない場合)ケースです。

じゃあ税理士は何もしないのかというと、会社が入力したデータのチェックや修正、そして決算整理仕訳の入力をします。
ある意味、これも会計ソフトの入力代行ではありますが、期中は会社、決算は税理士という役割分担となります。

経理担当者が伝票番号を管理している場合は、税理士は修正せず、経理担当者に入力をお願いするケースが多いです。
この段階でも、役割分担を明確にしておきたいものです。

また、経理担当者に入力が難しい、固定資産の購入や工事の請求書については、税理士が入力するか、仕訳を教えてもらって入力することになります。

この段階に達すると、税理士の訪問頻度も増えることが多いでしょう。
月次決算の数値も早期に把握できますし、経理の効率化のサポートを受けること、大きな金額の取引の事前の相談、決算予測をしてもらうことも無理なくお願いできるはずです。

会社と税理士、7:3くらいの役割分担です。

どのパターンであっても、会社は何をすればいいのか、税理士に何をしてもらえるのか、最初の打合せで両者の分担をよく確かめておく必要があります。

また、税理士から質問があれば、会社が回答しなければ仕事は進みません。
会計データの整備のため、会社と税理士とが、手を取り合う必要があるのです。

近況報告

去年の流行語大賞「ふてほど」(流行ってない)を視聴。
1話は、これで十分完結しているような完成度。2話目は、まあふつう……。
ソニーファンとしては、カセットウォークマンの登場が嬉しかった。

1日1新:TBSドラマ「不適切にもほどがある!」をネットフリックスで