心配になる決算書の特徴

決算書の勉強には、本物の決算書を眺めるのをおすすめしています。

会計学の本を読むだけでは足りません。

決算書を眺めて、どうやってこの会社は成り立っているのだろう……と想像することが勉強になります。
決算書だけでは、無味乾燥な数字の羅列です。
実際にその会社がやっていることについて、詳しい会社の決算書を見るから、想像可能になります。

よく知っているという意味では、取引先があります。
信用調査や、外注先に提出を義務付けているなどで見ることはあるかもしれませんが、通常は見る機会は少ないないでしょう。

そこで、個人的に好きな会社、消費者として利用している会社の決算書を見ると、勉強になるものです。

夕焼け

他社の決算書はどこで見るか

もちろん、上場企業であれば、EDINETで検索して、すべて見ることができますし、個々の上場企業のコーポレートサイトのIRライブラリにある有価証券報告書の財務諸表を見ることも可能です。

しかし、少し規模が大きすぎて、身近に感じられない会社が多いものです。

上場企業でなくても、資本金5億円以上、または負債総額200億円以上の会社は、計算書類なり、有価証券報告書なり、決算短信を公表しています。
外部(出資者、債権者)への説明が必要な、会社法上の大会社に該当するからです。

会社法上の計算書類(決算書)は、会社の定款によりますが、日刊新聞紙、官報、ホームページのいずれかで公表することとなっています。
老舗の会社だと新聞に載っていることが多く、新しい会社はホームページで公開(電子公告)していることが多いです。

大会社でない、街場の会社であっても、最低でも貸借対照表の公告義務があり、定款を見れば「官報に掲載してする方法」などと書いてあるものですが、実際には、掲載していないことが多いです。

会社へのお金の出し手が、その会社の社長1人しかおらず、外部に説明しなくても、問題が起こらないからです。

粗利がマイナスの決算書

最近、決算書を見ているなかで、これは心配だな、と思うものを見かけました。(その会社のホームページに公開されているものです)

まず、損益計算書が、売上総利益(粗利)が、売上総損失になっているのです。

外部から収入を得るために、会社から出ていかざるを得ない資産があります。パン屋さんがパンという資産を売ったらなくなります。
出ていけば資産は減少しますので、その減った分のことを売上原価といいます。

外部からの収入が売上高です。
売上高が計上されれば必ずかかる費用(売上原価)が、売上高を超えている状況は、通常の事業を続けるだけでは、黒字になる見込みがないのことです。

どんなに経費を削減しても、絶対に赤字になるのが、売上総損失が表示されている状況です。
いわゆる、原価割れです。

損益を黒字化するには、所有不動産や投資有価証券で含み益があるものを売却して、特別利益を計上するほかありません。

そして、貸借対照表を見ると、繰越利益剰余金が多大なマイナスになっています。
繰越利益剰余金の額を、決算期の数で割ると、1事業年度当たりの利益が分かりますが、毎期マイナスであったことが見て取れます。

お金の流れと、利益とは違うと言われますが、長い目(設立から清算結了まで)で見れば、現金収支差額と利益は同額になります。

損失ということは、営業の収支だけで見ると、収入より支出が多いのです。
そんな会社が、なぜ成り立っているのでしょうか。

赤字会社は貸借対照表の右側を見る

今回見たその会社には、強力なお金の出し手がいると言われています。

出資してくれたり、お金を貸してくれたりしているのです。
赤字続きでも、お金が続けば、会社は存続します。
営業が赤字でも、財務の収支がプラスなら、会社はつぶれません。

粗利がマイナスでは、銀行はお金を貸してくれないでしょうが、スポンサーがいれば別です。

貸借対照表の負債の部、純資産の部を見れば、その会社がどうやってお金を調達しているか見えてくるものです。
赤字続きの会社は、借入金なり、資本金なりが、大きな金額になっていることが多いです。

スモールビジネスの会社でも、社長が追加出資したり、貸付をしている限りは続きます。
社長が資産家なり、個人の収入源があれば、それで法人を存続させることは可能です。

対銀行を意識するなら、出資により債務超過を解消することも考えられます。

しかし、増資を続ければ、中小企業の軽減税率などの恩恵も受けられなくなります。
原則として、資本金を1億円超にしないのが、節税策の基本です。
会社側では、役員借入金とし、定期的な返済をしていないことを銀行に説明すれば、いちがいに評価が下がるものではありません(銀行が、資本とみなしてくれる)。

ただ、役員借入金を増やしすぎるのも問題で、貸付金の返済の見込みがなくても、社長に万一のことがあったときは、社長の貸付金(相続財産)になり、相続税も課税されます。

一時的に、この「心配な会社」のような決算書になってしまったら、その後は黒字を恐れないようしましょう。
過去の赤字について、10年間、その後の黒字から相殺でき、法人に税金はかからないからです(住民税の均等割や消費税を除く)。
税金のかからない利益を上げて、心配されない決算書に変えていきましょう。
繰越欠損金がなくなる(おおむね、繰越利益剰余金がプラスになる)あたりから、法人税等がかかりはじめますが、それまでは。

近況報告

今日は午前中にメールの返信とブログの下書きをして、午後は月次のお客様のところへ。現場を見学させていただきました。
夕方は、来月の準備をするなど。

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