信用金庫の持分(出資金)を譲渡した場合の消費税の課税区分

非課税売上

信用金庫の持分は、「有価証券に類するもの」なので、譲渡すると、非課税売上になります。以下理由です。

「有価証券その他これに類するもの」の譲渡は、非課税売上です。(消法6条、別表第一2号)

「有価証券その他これに類するもの」は、一語ではなくて、(株券のある)「有価証券」「有価証券に類するもの」に分かれます。

「有価証券に類するもの」は、さらに次の4つに分かれます。(消令9条)

  1. 株券のない有価証券(1号
  2. 合名会社・合資会社・合同会社・協同組合等の持分(2号
  3. 株主・投資主となる権利(3号
  4. 金銭債権(4号

信用金庫は、2号の協同組合等に含まれる(法法別表第三)ため、その持分の譲渡は、非課税売上になるわけです。

非課税でも「有価証券譲渡」ではない

問題はここからです。会計ソフトの入力上、普通の非課税売上(全額分母)と、有価証券の譲渡(5%分母)は区別しなければなりません。

有価証券譲渡になるのは、次のものの譲渡だけです。(消令48条5号)

  1. 株券のある有価証券(別表第一2号)=「有価証券」
  2. 株券のない有価証券(消令9条1号)=以下、「有価証券に類するもの」
  3. 株主・投資主となる権利(同3号
  4. 金銭債権(同4号

何かが足りませんね。「類するもの」が3つしかない。そう、協同組合等の持分(消令9条2号)だけがないのです。したがって、信用金庫の出資金(持分)を譲渡した場合は、ただの非課税売上(全額分母)になります。

協同組合等の持分だけが除外されているのは、取引頻度が低く、金額が小さいからとされています。理由が分かれば、憶えられますね。(高山弥生『消費税&インボイスがざっくりわかる本』税務研究会2022、p.91)

信用金庫の出資持分の譲渡があったとき、間違って課税区分を「有価証券譲渡」で入力したら、納める消費税が少なくなってしまいます。有価証券っぽいから「有価証券譲渡」と思い込んでいると、足をすくわれます。