事業者の方は、複式簿記で帳簿を作成することが基本です。
なぜそうするか。複式簿記には、次のような性質があるからです。
- 稼ぐ力をアピールできる
- その稼ぐ力が現預金などで裏付けられる
そのため、取引先も、金融機関も、税務署もその数値を基本に考えてくれます。
(もちろん、ちゃんと、分かっている人が簿記をやった場合ですが……)

簿記は、利益が年によって増減するのが嫌
複式簿記の最初の難関が、減価償却の計算です。
なぜそんな面倒な計算をするか。
それは、設備投資をした年だけ赤字で、その後はその投資がない分黒字になりつづける……という決算書は、簿記では作りたくないからです。
たまたま多額の設備投資をしたというだけで決算書が赤字になると、その会社は稼ぐ力がないと誤解されかねません。
設備投資をしなかったというだけで大幅な黒字が出続ける決算書も、稼ぐ力を過大評価させてしまいます。
そこで、設備投資をした年だけ業績が下振れしないようにするために、払った金額の一部を費用にする。これが減価償却です。
こういう理屈、基本、基礎的な考え方を理解しておくと、やり方だけを知ってただ経理するよりも、納得感を得ながらバックヤード業務に取り組めるでしょう。
ただ、キャッシュの上では設備投資分、お金が減っていますので、お金の増減は別に管理する必要があります。
先月と比べて現預金は増えているのか、減っているのか、月末の支払いには足りるのか等。
設備投資で一気にお金が出ていくのがつらい場合、設備資金を借り入れるなどして、簿記の世界とは別に手当する必要があります。
税金も利益の凸凹が嫌で、簿記と利害が一致している
簿記を習った方なら、引当金という方法で、将来の費用を先取りして今期に取り込む方法をご存じだと思います。
それで決算書の利益が減りますが、税金は減りません。
簿記で経費を計上する方法の多くは、税金の計算上は、なかったことにされてしまいます。
利益が少なくなると、税金も少なくなってしまうからです。
でも、減価償却に関しては、簿記と税金との利害が珍しく一致しています。
減価償却をすることにより、払った金額よりも経費を少なくして、利益の凸凹を抑えてくれるからです。
税収のことを考えたら、毎年コンスタントに利益を出してくれるほうがありがたい。
そこで、税金のルールどおりに減価償却していれば、税務署はもとより、銀行も取引先も、「それでいいよ」と認めてくれるのです。
10万円以上の支払いがあったら、税理士に言っておこう
では、利益を凸凹させてしまう多額の支払いとはいくらか。
税金のルールでは10万円以上とされています。ここから20万円未満までは、3年に分けて経費にして、利益をならしてくれとなっています。
青色申告をしている場合、30万円未満まで、1年で経費にしてよいことになっています。
このあたりの選択が必要になるので、税理士に伝えておくのがおすすめです。
どういう処理がいいか、経営者としても選択肢のイメージが持てると、税金が自分ごとになります。
税金の基本的な考え方も知っておきましょう。簿記と連動しているからです。
通常は、この30万円未満までを減価償却せず、消耗品費などにしておけば、納税が少なくなるので、資金繰りは楽になるはずです。
が、業績が悪いときにこれをしても納税は減りませんので、あえて減価償却をする方法もあります。
黒字になってから経費にできたほうが税金をトクすることも。
対銀行という意味では、10万円未満であっても減価償却することは可能です。小手先ですが、営業利益が若干増えます。
もっというと、実は中小企業の法人税軽減税率15%も、将来的になくなる可能性もあるとの話も出ています。
すると、いま経費を多めに計上して、15%の税率による税金を減らすよりも、増税後の経費にして23.2%分の納税を減らしたほうがいいという考えもあります。
税金に関する状況は変化しますので、最新情報の入手先として税理士を活用するといいでしょう。
編集後記
今日は子どもが振替休日だったので、平日の公園でいっしょに遊んだり、カードゲームをしたり。

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランス・独立間もない個人事業主・法人設立を検討中の方のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細