決算書に、個別注記表はついていますか?(中小会計要領)

法人の決算書を拝見していると、「個別注記表が付いていない」ものを見かけます。

あと、「「これ、あってもいいのにな」と思うものが付いてないこともあります。

それが、「個別注記表」と、「 『中小企業の会計に関する基本要領』の適用に関するチェックリスト」です。

ちゃんとした色と形のホットケーキ(子どもが焼いてくれた)

金融機関に見せるなら、義務は果たしておきたいもの

法人は、各年度で作成する義務がある書類があります。(会社法、会社計算規則)

  • 貸借対照表(略称:BS)
  • 損益計算書(略称:PL)
  • 株主資本等変動計算書(略称:SS。合同会社は、社員資本等変動計算書)
  • 個別注記表(略称:注記表)

ご自分の会社の決算書に、この4つが揃っているか、確認してみましょう。

意外とないのが、「個別注記表」です。
「個別」は「連結」と対比させるための言葉なので、ふつうの決算をしているだけなら、注記表でも意味はとおります。

上の3つは、会計ソフトが自動的に作成してくれます。
(株主資本等変動計算書は、残高の転記操作を要するものがあるので、操作もれに注意)

しかし、個別注記表だけは、何もしないと白紙か、出力されないことも多いのです。

もし、金融機関から借入をする予定だという場合は、個別注記表は作っておきたいところです。
会社法上、義務づけられている書類なので、銀行などから「義務なのに作っていないのか……」と思われてしまうでしょう。

ちゃんとしているアピールは、大事です。

注記表の作り方

会計ソフトで、個別注記表の作成画面を開くと、真っ白な画面が出て、途方に暮れると思います。

多くの場合、テンプレートを表示することもできるので、それを直すことから始めたいものです。

ネットにも、テンプレートがあります。

「中小企業の会計に関する基本要領」ノンブル24ページ(PDF26ページ)

中小企業向けなので、このクラスの記載ができていればよいでしょう。
テンプレートが大企業向けだと、そぐわないことも多いので。

例えば、よくある「1株当たり純資産額」や「1株当たり当期純利益」が例示されていません。
社長がオーナーの中小企業では、あまり意味のない情報だからでしょう。
対銀行を意識したもので充分と思われます。

さらに私がアレンジすると、次のような感じでしょうか(すでに内容が若干古いのと、西暦に直すとすると)。
一例ですので、実際の会社の経理状況に合わせて、アレンジしてお使いください。

個別注記表
自 2025年4月1日 至 2026年3月31日

1.この計算書類は、「中小企業の会計に関する基本要領」によって作成しています。

2.重要な会計方針に係る事項に関する注意
 (1)資産の評価基準及び評価方法
  ①棚卸資産の評価基準及び評価方法
   最終仕入原価法による原価法を採用しています。
 (2)固定資産の減価償却の方法
  ①有形固定資産
   定率法(ただし、1998年4月1日以降に取得した建物、2016年以降に取得した建物附属設備
   及び構築物は定額法)を採用しています。
  ②無形固定資産
   定額法を採用しています。
 (3)引当金の計上基準
  ①貸倒引当金 債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権について
         法人税法の規定に基づく法定繰入率により計上しています。
  ②賞与引当金 従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額の当期負担分
         を計上しています。
 (4)その他計算書類作成のための基本となる重要な事項
  ①繰延資産の処理方法
   開業費  支出時に全額費用として処理しています。
  ②消費税等の会計処理
   消費税等の会計処理は税込方式によっています。

3.貸借対照表に関する注記
 (1)有形固定資産の減価償却累計額  ○○円
 (2)担保に供している資産および対応する債務
  土地    〇〇円
  長期借入金 〇〇円

4.株主資本等変動計算書に関する注記
 (1)当事業年度の末日における発行済株式の数  〇〇〇株

通常、税務署に何も評価方法の届出をしていなければ、棚卸資産は最終仕入原価法、固定資産は定率法(法人。一部定額法)になっているはずです。

繰延資産の処理方法は、実際にその処理があった年度だけ書けばよいでしょう。

貸借対照表に関する注記でいうと、実務上は、減価償却累計額を貸借対照表に載せるほうが珍しいので、個別注記表に記載することになります。

毎年の決算の内容ごとに、注記の記載は変わります。
毎回、前年のコピペにならないようにしたいものです。

担保に入れている土地があれば記載することも、銀行や信用金庫などへの情報提供として必要です。

減価償却費や引当金の計上、繰延資産の費用処理が行われると、費用が増え、利益は減ります。
それでも毎期、これらの費用を計上する姿勢を見せれば、強い会社アピールになります。

赤字がちの会社は、これらの費用処理を行わないので、違いを作れます。

PLは、プロフィット・アンド・ロス・ステートメント。その会社の声明です。
何をアピールするかは、自分で決められるのです。

税理士に「中小会計要領チェックリスト」もつけてもらおう

個別注記表の冒頭に、「中小企業の会計に関する基本要領」として、決算書が則っている会計基準を明示します。
決算書を読む人(銀行など)は、この基準をもとに、数値を見るからです。

中小企業であれば、この会計基準(いわゆる「中小会計要領」 )を使うことが一般的です。

税理士がついている会社であれば、さらに「 『中小企業の会計に関する基本要領』の適用に関するチェックリスト」も付けている場合があります。

「中小企業の会計に関する基本要領」の適用に関するチェックリスト

これも、意外とつけている会社は少ないです。
以前は、チェックリスト融資といって、信用保証協会の保証料の割引が受けられたのですが、いまはほぼないので……。
ただ、金融機関から求められるケースもまだあります。

チェックリストの「YES」が多ければ、会社の利益と財産の額が、一定の信頼性をもって計算されていることのアピールになります。

チェックリストに「NO」がついたら、税理士が所見欄に理由を書いているはずです。

NOを減らしていけるよう、改善策を税理士と話し合ってみましょう。
融資を受けようという中小企業の決算書は、基本、うたがわれています。
そのため、信頼を得るための試みは、ひとつでも多くやって損はありません。

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