どうしてそうなっているのかを教える

今日は東京国税局・確定申告電話相談センターに従事しました。

9時から17時まで、電話の相談に答える仕事です。

私は1日に55件のご質問にお答えしました。

教える仕事の経験が、1日に55件積める、というのはなかなかです。

横浜市内某所にある電話相談センター

結論だけを教えるデメリット

質問された方には、まず結論をお伝えするようにしています。

時間のない方は、それだけ持ち帰っていただければいいのですが、結論だけではデメリットもあります。

この結論だけ知って帰るというのは、Google検索をしただけのような状態です。

1回検索したことがあるものの、内容は忘れてしまっていて、また同じことを検索したことはありませんか?

あるいは、数学の教科書に載っていた公式を暗記したものの、いまは何も覚えていない、というのも同じです。

質問者の方は、「前もこのコールセンターに聞いたんだけど」とおっしゃる方がしばしばいらっしゃいます。

そこで、原理を教えてもらわなかったので、また同じ質問をすることになってしまうのです。

原理を教えるメリット

ご質問に回答していくと、自然と質問者の方のほうで、「そうか、なるほど、わかった」という感じになって、「ありがとうございました!」と終わることがあります。

こういう終わり方が、教える立場の税理士として、いちばんうれしいものです。

短い時間の中でも、「どうしてそうなっているのか」を説明されると、ご自分の中で、わかる瞬間が来る。

「そういう仕組みだから、ここにこういう風に書くのか!/書かなくていいのか!」という感じをつかんでいただけると、電話は終わります。

申告書の形式や税法の条文も結論しかない

異業種から税理士業界に入ってきた私にとって、申告書に並ぶマス目や、税法条文のかっこ書きだらけの世界は、いびつに見えたものです。

でも、これらの書式や条文は、結論の世界です。

どうしてそうなっているかは、まったく説明がないから、気味が悪いのです。

その裏には、どうしてそうなっているのか? の原理の世界があります。

所得なり、税金なりを説明するとき、制度・条文・別表だけでなく、その理由や仕組みをお伝えするようにしています。

その仕組み、考え方をご自分の頭の中にもっていただき、その枠組みで、目の前の数字の動きを見て、「なるほどわかった」と思っていただけたら、税理士に高いお金を払った甲斐があるというものです。

教える仕事のコツ、肝は、そこにあります。

講師の仕事をするときは、ひとつの原理を説明し、その原理をいくつもの事象に繰り返しあてはめていくことで、聞いている方々の理解が深まるように工夫しています。

お客様といっしょに税金の「どうしてそうなっているか?」を探求していけたらうれしいです。

編集後記

確定申告電話相談センター、ヨドバシカメラでフラットヘッドスキャナを買う、LISTEN。