税制が変わる方向性を知るには

税金の制度は、どんどん変化していくのが特徴です。

節税が難しいのは、結局この点にあります。

いまの制度がずっと続く前提なら、「こうすれば節税ですよ」と言えるのですが、その前提が確かでないからです。

熱海にそびえるリゾートマンション

相続税の場合

相続税対策のように、数年後にメリットを受けようと思っていても、数年後の税制がいまと同じとは限りません。

マンションを買えば……という話もありましたが、節税の効果は薄まりました。

2024年1月1日以降に発生した相続から、タワーマンション、新築のマンション、高層階の1室の相続財産評価額が割増されるようになりました。

反対に言うと、それほど高層ではないマンション、築年数の大きいマンション、低層階であれば、結果的に割増がないことになります。

B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書|国税庁

このExcelシートに、マンションの建物の全部事項証明書のデータ(築年数、総階数、所在階、専有部分の面積、敷地の面積、敷地権の割合)を入力すれば、その部屋の評価額が割増されるのかどうかが分かります。

ただ、不動産は一品もの。
割増されないから買うものでもないでしょう。
自分が亡くなったあとのことを、どこまで心配するかです。

マンションや生命保険、足場レンタルのように、節税節税とアピールされる商品は、税メリットが薄れるよう、改正される傾向にあります。

消費税の場合

あるときから、AmazonのKindleや楽天Koboの電子書籍に、消費税がかかるようになりました。

以前、海外に本社がある会社が販売する電子書籍は、国内の電子書店の販売するものより、消費税分安いときがありました。

消費税は、日本国内の取引にしかかかりません。

当時は、配信会社が海外にあると、海外で行われた取引として、消費税が配信会社に課されていなかったのです。

楽天グループは、その税メリットを得るべく、海外(カナダ)のKoboなる配信会社を買収して、そこから電子書籍を販売するようにしました。

Amazonの電子書籍に価格面で対抗するためだったのでしょう。

でも、「日本にいる人が、電子書籍を買う」行為は、それが日本の会社から買おうが、海外の会社から買おうが同じはずです。

同じことをして、一方に税金が課され、他方に課されないのはおかしいので、これも税制改正が行われ、いまのような状態になりました。
海外の付加価値税の制度に追随した形です。

そして、楽天グループも、わざわざ海外の法人(Kobo)から配信するのをやめ、日本の会社から電子書籍を販売するようになりました。(Koboは事業部化)

同じことをしているのに、税負担が異なる取引は、改正される方向です。

最近の改正は、物価高対応

103万円の壁も、すっかり過去のものになりました。

今年は、給与を払う場合は、2024年と同じように天引きして、年末調整で還付する方式になっています。

アルバイトを雇っている場合、いつもより還付になる人が多くなるでしょうし、1月の源泉所得税の納付も0円になりがちでしょう。

日本の場合、物価や賃金が上がっているのに、税制が変わらないと、その分単純に税収が増える仕組みになっているのです。

海外では、物価に応じてこまめに制度を変える国が多いようですが。

いわゆる「まかない」、飲食店従業員に支給する食事ですが、従業員が、その食事代の半額を負担し、会社負担の半額の累計額が月額3,500円以内(税抜)であれば、従業員に給与課税しなくてよい取扱いとなっています。

しかし、いまやランチが1,100円はふつうで、従業員から550円徴収していたとしても、7回支給したら税抜3,500円を超えてしまいます。

お金を払っていないのに源泉徴収する計算をするのは手間ですし、給与課税しない方向にしたいのに、上限3,500円ではまかないは相当制限されます。

従業員から徴収する金額を半額超に増やせば上限をくぐりやすくなりますが、それではまかないの意味がなく、福利厚生アピールになりません。

昨今の物価高に対応し、さすがにこの上限3,500円は、見直される予定です。

現状に対して、あまりに合っていない制度も、見直されるようになっています。
(まだ、時代錯誤のまま放置されている制度も多々ありますが……)

節税アピールの強い商品、同じ取引との格差がある制度、物価高に合っていない制度。
そういうものがあると、将来の改正が予測できます。
アンテナを張っておきましょう。

近況報告

不動産評価の準備をしつつ、ブログ。海の日なのでちょっとゲーム(餓狼伝説 City of the Wolves)。
発売からちょうど3カ月、いまだに結構楽しい。勝つと爽快感がある。

1日1新:G空間情報センター