会社が目指すべきところ(賃上げ促進税制)

会社がどのような状態になっていてほしいか。国の求める方針は、税制改正にあらわれます。

国は、インフレに賃上げが追い付いていないので、給料をあげてほしいと考えているようです。

そういうのが理想なのかな、とイメージしておくための記事です。

賃上げ促進税制の改正(中小企業向け)

令和6年度与党税制改正大綱では、賃上げ促進税制の強化がうたわれています。(2024年4月以降が期首になる年度から)

賃上げ促進税制というのは、ざっくりいうと、前年から従業員の給料を100万円増やせば(前期比+1.5%以上)、15万円、法人税を減らしてくれる制度です。(減らす前の法人税×20%が、減税額の上限です)

給料を100万円増やせば利益が減って、税金も減るのは当たり前のことですが、この減税策を利用すれば、さらに15万円税金が減ります。

つまり、給料を約150万円増やしたのと同じだけ、税金が減ることになります。従業員の給料の支払いに関しては、その支出額以上に税金を減らす効果があるということです。(社会保険料も増えるので、ダメージ緩和くらいの効果ですが……)

さらに、前期以上に従業員に教育訓練を受けさせれば、税額控除額を+10ポイント分、増やせます。

教育訓練費を増やしたうえで、給料を100万円増やせば、25万円、法人税が減ります。

中小企業の場合、教育訓練費が前年から10%以上増えていればよかったのですが、改正で5%以上増加でよいことになります。

一見、要件がゆるくなったように見えますが、来年度からは、教育訓練費の絶対額が給料の0.05%以上でないと、+10ポイントの上乗せは「なし」です。

いままでは、教育訓練費を1,000円から2,000円にしても上乗せOKだったのですが、絶対値基準が加わったので、厳しくなったともいえます。年間の給料が2千万円なら、1万円以上の研修費支出が必要です。

ちなみに、研修を受けさせるともらえる厚生労働省の補助金もあるので、調べてみてはと思います。(支出が先行するので注意です)

国が理想とする会社のサイクル

人件費のほかには、設備投資をしたときに、さまざまな減税策か、課税のあと送りが利用できるものです。

まず、設備投資や教育訓練をして、その会社にしかできない仕事をしてほしい。

それで売上が増えてほしい。

売上が増えたら、賃上げをしてほしい。

それで優秀な人材を集めて、ますます売上を増やしてほしい。

それで利益が出たのなら、投資や人件費については税金を減らす効果を高めておくので、お金が手元に残る。

利益が出れば、銀行もお金を貸してくれるので、それで来年以降も設備投資・人材投資に力を入れてほしい。

理想的すぎるかもしれませんが、うまくいっている会社は、このサイクルが回っています。

控除を受けられなかった税額は、翌5期にわたって控除できるようになる

ただ、この減税策は、実際に利用してみると、減税を受けられる上限(減らす前の法人税×20%)に引っかかってしまい、教育訓練費を増やそうが減らそうが、減税額が変わらないことが多かったのです。

25万円の減税額が出せても、法人税が100万円なら、結局20万円の減税(納税80万円)にしかなりません。

この上限を超えた5万円は、何にもなりませんでした。

そこで、さらに賃上げや教育訓練を促進するために、この5万円を来期以降も使えるようになります。

ただし、来期も、給料が少しでも増えていることが条件になります。本来は前期比+1.5%以上の増加が必要ですが、前期に使えなかった減税額がある場合は、今期が据え置き+α程度であっても、減税が受けられます。

ただし、今期の給料が前期より減っていたらダメなので、5年以内に微増させる必要はあります。

コロナ時代からの回復傾向が出ていれば、結果的に給料が増えていることもあるでしょう。

「国の求めていることが、自社はできている」というイメージがあれば、減税策を受け忘れることはないはずです。

従業員に対する人件費・教育訓練費はきっちり記録・集計しておくことを心がけましょう(役員に対して払う金額は除くので、それが分かるようにしておきます)。

今日のできこと

  • 初めての酒屋「横濱屋」で、香川県の日本酒「金陵 濃醇純米」を購入。お値段が手ごろ。好みに合うか、楽しみ。