国や地方自治体、一般社団法人といった、営利企業(株式会社など)でない組織は、消費税の納税額の計算について、特例があります。
それが、国等の特例です。
なぜ、株式会社などと違う扱いなのか、考え方を確認してみましょう。
用語と、条文を読んだだけでは、わかりませんので。
消費税は、もらった税額<払った税額の還付がきらい
2割特例・簡易課税でない方法で消費税を申告している事業者は、還付のチャンスがあります。
高額な固定資産を買っても、売上から引けるのは一部だけ(減価償却費)だけなので、事業が黒字となることはあります。
一方、消費税は一気に引けるので、売上でもらった税額より払った税額が多くなり、消費税だけ赤字=還付となりえます。
この場合、税務署は必ず調査をして、問題がなかった場合だけ、還付してくれます。
調査といっても、実際に会社に来るとは限らず、郵便+電話だけのこともありますし、なんなら一切連絡がないこともあります。
署内で申告書を精査して、例えば会社を設立したばかりで経費が先行しているなど、だれでも還付になるだろう事情があれば、実地調査や連絡がなくても、還付されます。
でも、もし税務署から連絡があった場合は、求めに応じて追加の資料を提供しないと、永遠に還付されません。
基本、消費税の還付申告はウェルカムではないのです。
営利企業なら、売上より少ない金額の経費をかけて黒字を出すのが基本なので、もらった税額<払った税額 となる計算結果は、例外だからです。
一般社団法人などは、もらった税額<払った税額になりがちなので特例がある
株式会社などは、消費税がかかる売上による収入がメインです。自社の売上として、消費税を納税することになります。
その売上をもとに他社に払った部分は、他社の売上として、他社が納税します。
他社が納税する分は、自社が納税しなくてよい。いわば、他社の売上となる支払は、自社が納税したようなものです。
インボイス登録事業者に支払うということは、その支出の消費税部分は、税務署に払ったのと似たような扱いになります。
いっぽう、一般社団法人などは、一般会費による収入がありますが、これには、消費税がかからないものとして会費請求書に記載していれば、その分は消費税の申告に含めていないはずです。
インボイス制度に登録すると、一般社団法人などの各種法人は、消費税のかかる収入について、消費税の申告が必要になってきます。
でも、会費などで消費税のかからない収入は多いけれど、消費税のかかる収入は少ない。
とはいえ、株式会社などのように、他社への経費の支払い(消費税がかかる)は発生します。
すると、もらった税額<払った税額 になりやすく、還付申告になりがちなのです。
それでは、株式会社などと比べて不公平だということで、是正措置が設けられています。
それが、特定収入が多ければ多いほど、売上から引ける消費税が少なくなるように計算する(払った消費税をマイナスする)、国等の特例です。
特定収入とは何なのか
特定収入とは、ひとことでいえば、消費税のかからない収入のうち、消費税のかかる支払に充てる可能性があるものです。
株式会社のように、消費税のかかる収入で、消費税のかかる支払に充てれば、問題ありません。
特定収入が多ければ、消費税額は少なくなり、そこから引ける税額が多くなり還付申告に近づきますので、問題になります。そこで、まずこれを集計する必要があります。
いわゆる〇〇協会の通常会費といったものは、消費税がかかりませんので、この中に特定収入が含まれている可能性があります。
補助金・助成金のたぐいもそうです。
でも、消費税のかからない収入を、消費税のかからない支払に充てれば、これはこれで問題がないわけです。還付申告に近づきませんので。
資金使途が人件費などに充てられることに決められていれば、問題のない収入として、特定収入には含めません。
消費税のかからない収入が、収入全体の5%を超える一般社団法人などが、簡易課税・2割特例で計算できない場合は、国等の特例の対象になります。
消費税のかからない収入は、会社員のお給料が典型です。会社員は消費税を申告・納税はせず、事業者が納める消費税の原資を代金として供給する存在です。
消費税のかからない収入が多い社団法人などは、会社員や一般消費者に近い存在です。会社員がいくら外部にお金を払っても消費税の還付が受けられないのと似ています。
とはいえ、国等の特例で払った消費税からマイナスされるのは、外部への支払いにかかる消費税だけです。
売上の値引き・特定課税仕入れの値引き・売上債権の貸倒れに含まれる消費税はマイナスされませんので、これらを適切に課税区分の設定をしておくことが、納税を増やしすぎないための対策となります。
今日のお酒
- 小田原北条 純米酒。2015年発売の新しい日本酒。やや辛口であっさり目。個人的にはもうちょっと味があったほうが好きですね。