社長の社宅でいちばん税金がお得な物件は

真田家の社宅…というか保養所だった高野山・蓮華定院

会社名義で居住用物件を賃貸してもらい、社長の社宅にする(社長が又借りする)と節税できるとお聞きになったことがあるのではと思います。

その場合の注意点を解説します。

タイトルの結論から先に言うと、「自社所有物件の床面積≦99㎡ or 132㎡(建物の構造による)」のものを社長が借りるのがいちばんお得です。

会社名義の賃貸住宅を社長に転貸した場合

ふつうの役員社宅の場合

ふつうの賃貸住宅を会社で社宅として契約(住む人を社長と明示)して、それを社長が借りる転貸形式の場合。

社長は、会社が大家さんに支払う家賃(家賃相場)の50%を、会社に支払います。

すると、相場より安く住める分、社長の収入が実質多いのと同じですが、そこに所得税はかかりません。

この家賃の50%が、社長が今お住まいの賃貸の家賃より安くなった分、社長の役員報酬を下げてもいいことになります。

下げると退職金に響くので下げなくてもよいです。いずれにしても所得税が節税できます。

(所得税はかからなくても、現物給与として社会保険料がかかる可能性がありますので、社会保険労務士にご相談ください。※以下、同様です)

会社としては、大家さんに払う家賃-社長からもらう家賃 が経費になります。つまり、支払った家賃の50%が経費になります。

会社が払った金額の50%を会社が経費にして、残りの50%を社長の経費にする(収入を減らす)イメージなので、払った金額以上の節税というわけではありませんが。(所得税率が法人より高ければ、その分ましという程度)

なお、課税売上高が5億円超の法人の場合は、消費税の納税が増加する可能性があります。

豪華役員社宅の場合

ただし、社宅が次のいずれかに該当する場合は、豪華役員社宅と扱われるため、社長への課税を避けるためには、会社が払っている相場の家賃と同額を、社長が払う必要があります。

  • 1世帯の床面積>240㎡
  • ふつうの住宅にはない設備(プールなど)や、社長の個人的趣味のための設備がある

そうすると、社長は相場の家賃を払っているだけ、会社も払った家賃と同額をもらっているだけとなり、双方に節税効果はないこととなります。

会社所有の住宅を社長に賃貸した場合

社宅にする物件を会社が所有している場合、お得度は、転貸する場合より高くなる可能性が高いです。

そもそも社宅は、昭和の大企業のことを考えればわかりますが、自社所有物件を、従業員に貸すのがふつうでした。

すると、所有者である会社に、固定資産税納税通知書が届きます。

そこに記載されている、社宅の土地と建物の「固定資産税の課税標準額」をもとに、社長が払うべき家賃(社長に課税されない金額)を計算するのです。

また、よくあるパターンとして、社長個人が所有している土地の上に、会社が建物を建てて、それを社長に貸す場合があります。すると、

  • 社長に、土地の固定資産税納税通知書(会社が社宅の敷地として借りている分)
  • 会社に、家屋の固定資産税納税通知書(会社が社宅の建物として所有している分)

が別々に届くことになりますが、この両方を使って社長が払う家賃を計算します。

借りている土地の分も計算に含めるのがポイントです。

社長が所有者なので、書類を集めるのは難しくありませんね。(第三者から土地建物を借りていると、手間がかかります)

ただし、固定資産税の課税標準額が上がっている場合は、見直しが必要になります。

また、納税通知書の「価格」ではなく、「課税標準額」」を使うことに注意が必要です。

小規模な役員社宅に該当する場合

小規模な役員社宅に該当する場合が、社長が払うべき家賃が最も小さくなります。

社宅で節税効果を100%得たいのであれば、床面積に制限があります。あんまりぜいたくな社宅には住めません。
ただ税金的にはいちばんお得な物件ということになります。

  • 社宅が鉄骨造で、骨格材の肉厚が4mm超…社宅の床面積≦99㎡
  • 社宅が鉄骨造で、骨格材の肉厚が4mm以下、または木造…社宅の床面積≦132㎡

小規模な役員社宅に該当しない場合

節税などくだらん! と広さを求める方なら、社長が払うべき金額は上記の3倍~にアップしますが、払いさえすれば社長に追加の課税はありません。

※この記事すべてそうですが、会社から役員に貸す賃貸借契約書や、役員社宅規程などの書類も整備しましょう。

  • 前述の豪華役員社宅に該当した場合(240㎡超 または 豪華設備あり)…相場の家賃
  • 前述の豪華役員社宅に該当しない場合(132㎡超240㎡以下 かつ 豪華設備なし)…小規模な役員社宅家賃の3倍ほどの家賃

家賃の計算式は、あちこちに情報があると思いますので書きませんが、公式情報だけご紹介。

No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁 (nta.go.jp)

居住用の不動産をお持ちの法人経営者の方は、社宅を検討してみてもよいでしょう。


編集後記

子どもたちが『バーナード嬢曰く』から読みたい本を探してくるので、有隣堂で買ってあげました。