独立・開業したばかりの方と、税理士との付き合い方

会社員と、会社員でない方とは、大きな違いがあります。

会社員は、税金のことは、まったく何も知らなくても、生きていくことができます。
会社があなたの所得を把握しているので、納める必要がある金額を代わりに計算してくれたからです(1カ所勤務の場合)。

それが、真反対になるのが独立・開業です。
所得を把握しているのは、あなた自身になる、が前提に変わります。
いったん売上の全額を受け取り、国や自治体の取り分をご自分で払った残りが、自分のお金になるのです。

税理士会の2025年度ポスター

所得を計算するのに便利な方法が、経理

独立、開業すると、所得を把握しているのは、ご自身だけになります。
ご自分で計算した所得をもとに、納める税金や社会保険料、もらえる補助金・助成金の可否が決まります。
なので、原則として、ご自分で経理や税金の申告をする必要があるのです。

所得とは、ざっくりいうと、1年間の純資産の増加額のことです。
これを計算するのに、いわゆる簿記の知識を使います。

少なくとも、会計ソフトの操作方法を学んでおきたいものです。
本もいろいろ出ていますし、ネット上にも情報はあります。
昔なら、商業高校で簿記を学んで、そのまま開業したのでしょう。
その前段階を経験していないなら、独立したいまからでも勉強が必要です。

簿記の知識として、最初に知っておくべきが、勘定科目には5つのグループがあるということです。
ここを抑えておかないと、せっかく会計ソフトを使っても、出てくるデータは意味のないものになってしまいます。

  • 貸借対照表の科目:期首・期末の純資産を求める
    • 資産グループ 普通預金、売掛金、立替金、…
    • 負債グループ 借入金、買掛金、預り金、…
    • 純資産グループ 資本金、…
  • 損益計算書の科目:純資産の増減の原因別内訳
    • 収益グループ 売上高、雑収入、受取利息、…
    • 費用グループ 仕入高、雑損失、支払利息、…

早めに学べば、それだけ知識が長く使えます。

この知識を使って、独立後のご自分の所得を計算します。税金はこの計算結果にかかってきます。

ただ、ひとくちに独立したばかりといっても、状況はいろいろです。
なんとなく、先に独立した先輩から税理士の話を聞いているが、具体的にどうすればいいか、状況に応じて考えてみました。

顧客(ほぼ)ゼロでの独立

独立・開業は、基本的には、お客様が1人でもいて、売上が立ってからでないと、できません。

あるいは、第1期のうちに、ゼロから1万円でも売上を得る必要があります。

私もこの口で、初年度はわずかな売上から始めました。

この場合だと、税理士に顧問を依頼するというのは、金銭的に選択肢に入らないのではないかと考えます。
私も対応していますが、税理士によっては有料で単発相談メニューがありますので、そこで、ご自分に不足している知識を、そのつど補ってもらうのがよいでしょう。

単発相談

単発相談なら、1.5万円から、年に数回依頼しても10万円(税抜、以下同じ)程度で収まり、顧問契約をするよりもコストを抑えられます。

「投資を回収し、利潤を追求する」独立をしたからには、投資額は少ないほうがいいからです。

しかし、この単発相談の金額も高いな、とお感じの場合。

独立したのが同じタイミングのフリーランスや経営者仲間がいれば、何人かで税理士に勉強会・セミナーを開いてもらう、あるいは、参加者を募集しているセミナーに応募してみるのもよいでしょう。

個別の質問対応時間は限られますが、単発相談よりも料金が安い場合が多いです。
私の場合、1人5千円から勉強会の依頼は受けています。

勉強会の依頼・ご相談窓口

すでに顧客が決まっている独立

勤務時代のお客様がつくことが決まっている。
そもそも、自分への仕事の依頼をきっかけに独立・開業した。

という場合だと、初年度から数百万円~の売上が見込まれる場合があります。
初年度から法人を設立することもあるでしょう。

この場合は、最初から税理士に顧問を依頼しても、顧問料を負担できると考えられます。
一度、初年度の収支をシミュレーションしてみてもいいでしょう。
利益に対する税金の負担は、ざっくり30%と想定します。

税務顧問

業務上必要な、お金とものの流れをチェックするための資料を作成し、税理士に帳簿・決算書を清書してもらうか、ご自分で会計ソフトへの入力までして、チェックしてもらうかです。

なるべくご自分でやったほうがコストは下がりますが、まったく経理経験・知識に自信がないなら、ご自分では会計ソフトに手を出さないほうがいいかもしれません。

他方、社長なり経営者の方なりに、経理(給与・源泉徴収、会計ソフト、銀行の手続きなど)の経験、会計事務所の勤務経験などがあると、けっこう有利です。

ご自分で日々の経理をこなし、決算・申告のときだけ税理士に単発相談でチェックしてもらい、自分で申告まで行うというのも、コストを抑える選択肢になります。

税理士事務所のホームページを探してみて、そういう依頼ができないか、チェックしてみましょう。

近況報告

子どもの中学の合唱イベントを聴きに。
隙間時間にスタジオコロリド作品の個人的最高傑作の映画「ペンギン・ハイウェイ」を見返す。ラストシーンにほんのり涙が……。
仕事は、法人、個人の月次の会計ソフト入力を進める。

1日1新:勉強会の相談窓口の開設