NPO法人は、寄付に関する取引が多くなります。
NPO法人会計基準で決算するにあたり、寄付の周辺で判断に迷うことを、整理しておきましょう。

お金に換算できないもので寄付を受けた場合
事業で使うものを、現物で寄付していただくこともあるでしょう。
NPO法人会計基準によれば、現物寄付については、もらったときの時価の金額で、貸借対照表の資産の部に記載する、とあります。
しかし、ほとんどの場合、もらったものの時価はわからないのではないでしょうか。
ちなみにこの時価は、基本的には、「これを売るとしたらいくらになるか」というものです。
定価のある書籍などであればともかく、市販されていないような品、中古市場がないような物品は、時価(公正な評価額)がわからない、というのが結論になります。
金額がわからないものは、活動計算書の収益や、貸借対照表の資産に記載しようがありませんので、記載しません。
(もし、金券など、金額が誰でもわかる場合は、貯蔵品/資産受贈益 といった処理をします。
使用したら、例えば 消耗品費/貯蔵品 として、資産を減らす処理をします)
しかし、支援してくれる企業から、定期的にそれなりの物量で寄付を受けている場合、事業報告書に何も記載がないと、支援者としては、「うちが寄付したもの、どうなった?」と思うのではないでしょうか。
そこで、金額を記載せずに、注記する方法があります。
「財務諸表の注記」のページに、「支援物資の内訳」という項目を設け、今期、何を、いくつ寄付していただいたか、一覧表にするのです。
寄付された物品の在庫が残っている場合
期末に支援物資(寄付していただいた物品)の在庫が残っていることも考えられます。
特に、大口の寄付者への説明が必要そうなら、期末の支援物資の在庫数量を、商品別に、財産目録に記載することも考えましょう。
この場合も、時価がわからないものは、金額の代わりに「評価せず」と記載します。
支援物資の在庫を期末に棚卸(商品の種類別に、数をかぞえて、棚卸表に記録すること)をするだけでもいいのですが、理想的には、受払簿(商品有高帳)で管理したいものです。
というのは、残念なことではあるのですが、いまはネットで個人同士でものの換金が容易にできるため、横領される可能性も考えなくてはならないからです。
金銭出納帳のようなイメージで、寄付を受けたときに、その受入数を記録
事業で使用したときに、その払出数を記録
受入-払出=残高(在庫数量) を記録していくのです。
すると、その受払簿の残高の数字と、期末に棚卸した在庫の数とが一致しているかどうかで、使途不明でなくなったものがあるかが判明します。
差が1個や2個なら、受払簿への記載もれ、在庫の数え間違いかもしれませんが、ごそっとなくなっていたら、調査が必要かもしれません。
物販する予定だったものを寄付の返礼品に変更した場合
寄付を受けるにあたって、返礼品を送っている場合もあるでしょう。
NPO法人として物販も行うために、商品を仕入れて(商品仕入高/買掛金)いたが、その商品を、返礼品に転用するケースを考えてみます。
商品仕入高(期末に未使用なら商品・棚卸資産)は、売るための商品を買った費用を扱う科目です。
寄付を集めるためのグッズとして使って、資産(商品)が減ったのであれば、用途変更として、 広告宣伝費/商品仕入高 という、費用から費用への勘定科目の変更(振替)処理を行います。
簿記でいう、「他勘定振替高」という処理です。
期末に在庫があって、貸借対照表に載せるときは、売る予定のものは「商品」、使う予定のものは「貯蔵品」にしますが、金額的に分ける必要性がないときは、どちらも「棚卸資産」という一つの勘定科目でまとめてしまってもよいでしょう。
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近況報告
税理士会の電話相談の裏方事務を。カフェ巡りしつつ、午後はNPO法人の決算。YouTube、ブログ。
1日1新:CRAFT.(BankPark YOKOHAMA)

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細