お客様が倒産したら貸倒れ、では仕入先が倒産したらどうする?

売掛金の管理には気を使っていることでしょう。

初めてのお客様なら前金でもらうとか、業績不振のお客様から多額の注文があったら取り込み詐欺を疑わなければならないとか、そして倒産(法的整理)があったら貸倒損失を計上するなど、与信管理に気をつかうところがあります。

仕事をしたのに入金がないのは、大ピンチレベルがかなり高いからです。

では、その売掛金の反対、買掛金については、どうでしょうか?

朝の山下公園

仕入先が倒産して、請求されなくなった場合

買掛金の場合は、こっちがお客様なのですから、仕入先が倒産したら、「お金払って!」と言われることはなくなります。

むしろ得しています。
商品は仕入れ済みで、お金を払わずに済んだのですから。
ピンチというより、ラッキーでしょうか。

払おうにも、相手の会社が消滅してしまって、払えないケースもあるでしょう。

負債(買掛金)は、原則、お金を払ってなくすものなので、出金がないと、いつまでも貸借対照表に金額が残ってしまいがちです。

これは、これでリスクがあるのです。

いまは、支払期日(または最後の被請求・支払い)から5年経過したときに時効が完成します。
(短期消滅時効は改正でなくなりました)

その時点で、仕入先が2回目の不渡りを出したとか、債権者集会を開いている倒産状態であれば、買掛金について支払いをせずとも、負債(債務)がなくなったと認定された地裁・高裁の裁判例があります。

  • 仙台高裁昭和62年(行コ)第3号法人税更正処分等取消請求控訴事件(棄却)(確定)
  • 広島地裁昭和34年(行)第6号所得税審査決定取消請求事件

債務が消滅すると、 買掛金/債務消滅益など という仕訳により、買掛金を0円にします。
通常は、 買掛金/普通預金 などとなるのですが、お金を払わずに済んだ利益を、収益にするのです。

時効の完成後、時効を援用しなければ、民法上、債務は消滅しないとされます。
しかし、5年が経過し、法的整理も済んでいるような場合は、債務免除益を計上していないと、あとで不意に追加の納税を求められるリスクがあります。
上記の裁判例では、会社は時効の援用はしていませんでしたが、税務調査の結果、債務消滅益が認定されています。

むしろ、時効が完成したら、積極的に時効の援用の手続きを取ったほうがリスクは下がるのです(納税を確定させる)。

仕入代金に争いがあって、仕入先が債務免除してきた場合

仕入先が倒産せずとも、先方からの請求額に納得できずに払わない状態が続いているケースもあります。

争いが長期化し、相手方が回収をあきらめて、債務免除通知を送ってきた場合。

この場合も、債務免除された事業年度に、 買掛金/債務免除益 を計上する必要があります。

この場合、売り手の側では、回収できるものを債務免除したとして貸倒損失の計上が認められなかった場合であっても、自社の側では、お金を払わずに済んだことに代わりはありませんから、債務免除益は計上します。

負債が収益に変わる可能性を意識しよう

第三者の仕入先の債務だと、なあなあにしないように気をつけている場合でも、会社と社長間の取引だと、放置されてしまう場合もあります。

仕入債務ではなく、社長が、会社の資金繰りのため、お金を貸しているケースです。

会社の役員借入金(負債の部。社長から見ると、貸付金)は、将来、社長の相続財産となり、回収可能性がなくても、貸した金額と同額で評価することになります。

そこで、相続税対策で債務免除をする場合もあるかもしれません。

そのような会社の場合、繰越欠損金(過去の赤字で、翌年以降の利益から差し引ける)が多額にある場合も多いものです。

今年使える繰越欠損金>役員借入金 であれば、債務免除されても、その分に対し、会社に税金は生じません。

ただ、繰越欠損金は10年で消滅してしまうので、債務免除を検討する場合には、欠損金の消滅前に行いたいものです。

負債は、お金を払ってなくすものだが、払わない場合は、収益に変わる。
このことを意識して、あらためて貸借対照表の負債の部の内訳チェックをしてみては。

近況報告

今週は関内で仕事。ついでに立ち寄ろうと思っていた「コーヒーの大学院」が、今日から工事で臨時休業。
カフェ難民になりました……。お昼はbenten103でクッキーをごちそうになる(たまにおすそ分けをいただける)。
帰宅してからは、法人の決算、お客様からの質問メールに回答するなど。

1日1新:高校の同窓会会報に税理士事務所の広告掲載