コロナ禍の3年間は据え置き気味だった地価(固定資産税評価額)が、都心部でいま、急増しています。
「土地の無償返還に関する届出書」を提出済みの場合、使用貸借とみなされるリスクを低減するため、借地人である法人が、固定資産税の3倍程度の地代を支払う契約を交わしている方も多いと思います。
しかし、これだけ固定資産税評価額が上昇すると、いまの地代が、本当に固定資産税の3倍なのか、確認する必要があるのではないでしょうか。
で、見直してみたら、周辺の地代と比べて安すぎたり、地代が固定資産税の3倍をけっこう下回ったりしていた場合、地代の値上げをすることになろうかと思います。
そこで、土地賃貸借契約書(覚書)を変更しました。すると、無償返還届に記載した地代と異なることになってきます。
この場合、無償返還届の再提出は必要でしょうか。
分からなくなったら、基本的な用語の意味を確認しよう
無償返還届の最終ページ(記載要領等)で、地代の値上げに関係ありそうな項目を探すと、「契約の更新又は更改があった場合、借地人等との連名の書面(2通)を提出せよ」とあります。この書面は、無償返還届のことを指すと考えて問題ありません。
「地代の値上げで土地賃貸借契約書を変更した。これって、契約の更新にあたるのかな? じゃあ、再提出すべき?」と思うかもしれません。
ちょっと待ってください。
無償返還届の1枚目では、「借地権の設定等」か「使用貸借契約」のどちらかを選ぶようになっています。
お手元の契約書の形式上は「土地賃貸借契約書」かもしれませんが、この場合、実質は「借地権の設定等」の契約なのです。
すると、「借地権の設定契約の更新」「借地権の設定契約の更改」という言葉の意味をつかんでおいたほうがいいと思いませんか。
通常、借地権の設定契約は、30年後に更新期限が来ます。そこで更新料を支払って期限を更新します。これが、借地権の存続期間の更新です。
また、通常は、建物の建替えを行う場合、承諾料を支払って契約を一新します。これが、借地権の更改です。
契約変更で再提出が必要なのは、借地権設定契約の更新・更改をした場合
このいずれかのタイミングで地代を値上げしたなら、「更新」「更改」に該当し、無償返還届の再提出が必要となります。
今回は、30年が経ったわけでもないし、建物を建て替えたわけでもないですね。単に、地代を値上げしただけです。
すると、記載要領等の「その届出に係る土地の所有又は使用に関する権利等について次のような変動」のいずれにも該当しないこととなりますので、無償返還届の再提出はしなくてよい、ということになります。