転勤や移住などで、せっかく新築で購入した自宅に住まなくなり、人に貸し出す場合。
不動産所得の計算をするにあたり、建物部分の減価償却費を出しておく必要があります。
その方法を解説します。
まず建物の新築の金額を算出する
住宅を分譲会社から新築で購入したケースを想定します。
住宅の売買契約書に消費税額が記載されています。消費税は土地にはかかりませんので、この消費税はすべて、建物にかかっています。
消費税額が1,600,000円で、消費税率が10%の場合、次のように計算します(税込経理の場合)。
税抜金額×税率=消費税額 | 税抜金額×10%=1,600,000 |
消費税額÷税率=税抜金額 | 1,600,000÷10%=16,000,000 |
税抜金額+消費税額=税込金額 | 16,000,000+1,600,000=17,600,000 |
まとめ:消費税額÷税率+消費税額=税込金額 | 1,600,000÷10%+1,600,000=17,600,000 |
だいぶ前に買った住宅だと、消費税率が違う場合がありますので、この計算をするときは注意が必要です。
- 1989年4月1日~ 3%
- 1997年4月1日~ 5%
- 2014年4月1日~ 8%
- 2019年10月1日~ 10%
2019年からは10月から変更です。「10月だから、10%にするよ!」とかそういう連想なのでしょうか……。
貸し出すまでに下がった価値を引いて未償却残高を求める
これまで数年、お住まいになっていたのでしたら、その分、価値が下がっています。
でも、価値の下がり方は、賃貸に出す場合よりも緩やかなはずです。ご自分で大事に住まわれていたのですから。
木造の建物で、住宅用の法定耐用年数は22年です。でもこれは、賃貸に出した場合の耐用年数なので、自宅にしていた場合は、これに1.5倍します。ここでは33年です(木造でなく、1.5倍後に端数が出る場合は、切捨て)。
法定耐用年数33年の旧定額法の償却率は、 0.031 ですが、これは耐用年数・償却率表を見なくても、実は自分で計算できます。Excel関数でいうと、 =ROUNDUP(1/33,3) です。
1÷33年=0.0303030… → 0.031(小数第四位切上げ)
さきほどの建物の税込金額17,600,000円×0.9×0.031=491,040円が、1年間に下がった価値となりますので、これに貸し出すまでの年数(自宅として使用していた年数)をかけると、貸し出すまでに下がった価値が求まります。
ここで、税込金額に ×0.9 するのがミソです。いつ買ったのか関係なく、旧定額法の計算方法になります。
また、自宅として使用していた年数についてですが、仮に4年9カ月の場合、5年分の価値減少として計算します。
6カ月以上の端数は、1年経ったと扱うためです。先ほどの、1.5倍した法定耐用年数は端数切捨てでしたが、使用年数は6カ月未満は切捨て、6カ月以上は切上げと異なるので混同注意です。
するとこの下がった価値(減価償却費の償却済み額)は、 491,040円×5年=2,455,200円です。
これを建物の税込金額から引きます。17,600,000-2,455,200=15,144,800円です。これが、前年末の未償却残高です。
貸し出してからの償却費を求める
混同注意すべき点がさらに3つありまして。
必要経費にする減価償却費の計算は、1.5倍した33年ではなく、22年のままで行います。他人に貸すから、痛みが激しいイメージです。
さらに、先ほどの減価償却費の計算では、税込金額×0.9 の計算をしましたが、償却費の計算では、2007年4月以降に取得した建物については、定額法なので、×0.9 しません。
※2007年3月以前に買った建物については、旧定額法なので ×0.9 します!
最後に、先ほど求めた 15,144,800円は、未償却残高であって、取得価額ではありません。2016年以降に取得した建物はすべて定額法で計算しますので、あくまで当初に買った税込金額 17,600,000円に、法定耐用年数22年の償却率 0.046 をかけて償却費を計算します。
すると、貸し出してからの1年分の償却費は、17,600,000×0.046=809,600円となります。年の途中から貸し出した場合は、月割計算をします。
実際には、確定申告書等作成コーナーで計算しますので、入力は以下のようになります。
今日のアナログ
- 郵便で出した手紙が、重量オーバーで戻ってきていました。10円切手を追加で貼ってポストに入れました。郵便、罠が多い……
- ちなみに紙で確定申告書を出す場合、郵便・レターパックだと申告期限の当日消印有効です
- でも、ゆうメールや宅急便はNGです。申告期限当日に発送しても、期限後申告になってしまいます。罠だらけなので混同注意です