消費税の申告を以前からしている事業者にとって、簡易課税は便利な存在です。
インボイス制度(仕入れ側)とも無縁です。経理もらくちんです。
特に、士業・エンジニアの人材派遣業・ソフトウェア開発業にとって、消費税のかかる経費はほとんどないのに、50%も認めてくれるというのは、ありがたいものです。
簡易課税が使えなくなる時期を把握しておこう
半面、売上が伸びた結果、簡易課税が使えなくなると、突然消費税の負担が重くなるので、売価・料率・経費も見直さないといけませんね。
売上が5000万円を超えたら、その翌々期から使えなくなるのが分かるので、事前に準備・計画をしておきましょう。
想定しておかないと、けっこうあわてることになってしまいます。超えないように、売上をグループ会社にバックデートで付け替えたりしてはダメですよ! へんな工作はやめましょう。
人的サービス業でも、簡易課税が不利になることも
自分や従業員の働きで稼ぐ仕事の場合、通常、給料以外の経費はわずかなので、簡易課税が有利になります。
でも、その仕事のスタイルが変わることがあります。
一つは、自社でカバーしきれなくて、外注を増やすという場合。
もう一つは、自社が大手と取引口座があるので、同業者に口座を貸してあげる場合。
外注費などが増え、損益計算書上の粗利率が下がってきます。
すると、消費税のかかる経費の割合が上がってきて、簡易課税の納税額が、一般課税の納税額を上回ってくることも出てきます。
そういった、売上原価が急増した年については、簡易課税のままで行くしかないのですが、そのスタイルが翌期も継続しそうなのであれば、翌期から一般課税に戻すのも一つの方法です。
簡易課税初年度の場合は、一般課税には戻せませんので注意です(2年連続簡易課税で申告するのが原則です)。
このあたり、顧問税理士がいると、アドバイスがもらえるはずです。
例外的に、今期から簡易課税をやめることもできる
通常、簡易課税をやめるには、まず2年は簡易課税の年度を迎えて、2年目以降のうちに簡易課税制度選択不適用届出書を出す必要があります。
届出を出した翌期から、簡易課税→一般課税の切り替えが行われるからです。
3年目になってから、消費税の申告書と一緒に不適用届出を出すと、4年目から一般課税になることになるので注意です。
ただし、例外的に、簡易課税を選択した年度のうちに、一般課税に変更することができます。
それが、災害等にあった場合です。
タコ足配線で火災を起こして、事務所設備に多大な修繕費がかかった場合。
能登半島地震など、特定非常災害に指定された災害にあった場合。
消費税のかかる経費が増大した場合、一般課税に変更すれば、簡易課税よりも納税を減らしたり、簡易課税では受けられない消費税の還付を受けることができます。
さらに、災害で会計データやインボイスが消失してしまったとしても、どうしようもない事情と分かってもらえますので、問題となりません。
税金は、誰が見ても払えない人に対しては、やさしいのです。
今日の税理士事務所
- 事務所スペースのレイアウトを見直し、いらない紙を処分しました。