不動産はいつ売ったといえるのか

個人間での、ふつうのものの売り買いは、シンプルです。

代金をもらって、相手にモノを渡した日。

では不動産はどうか。「はいこれ」と家や土地は渡せません。

かといって、「この日」と決めないと、いつその売却益を確定申告したらいいのかが決まりません。

いわゆる住宅(建物+土地)を売却した場合、「売った日」は次の日のどれでしょう?

  1. 契約した日
  2. 手付金を支払った日
  3. 売買代金の全額が入金された日
  4. 売買契約書や領収書を登記のため買い手に渡した日
  5. 司法書士が所有権移転登記をした日
  6. その家の玄関の鍵をもらった日

税金の世界では、「動かしにくい日」が売った日になる

こういう税金の問題を考えるときの原則があります。

売った日は、「動かしにくい日」になるのが原則です。

お金が入ってきた日は有力ですが、納税をあと送りにしたいから、後払いとし、年をまたいで入金してもらうこともできます。

司法書士が所有権移転登記をした日。これも有力っぽいですが、登記をお願いした日が金曜の夜だったり、司法書士が風邪をひいてしまったりすると、後にずれ込むことも考えられます。

答えは、原則として、「4. 売買契約書や領収書を登記のため買い手に渡した日」です。

その「渡した」という日は、人が書類を持ち去ってしまうので、なかなか動かしにくいですね。

それに、その書類があると買い手は登記ができるので、実質的にも自分の手を離れたともいえます。

2024年12月中に登記に必要な書類を渡してしまえば、所有権移転登記や未収金の入金が2025年になっても、2025年3月15日までの確定申告が必要となります。

通常は、書類の引渡日=全額入金日=登記の日となりますが、違っていたときは書類の引渡日で考えます。

売買代金の3分の2を受け取って、所有権移転登記が完了したときは?

全額が入金される前に、引き渡されることもあります。

売買代金の全額を受け取ってから、書類を引き渡し、買主が登記するのがふつうのパターンですが、契約により、代金の大半を前金として受け取ることで、登記まで完了することもあります。

  • 1年目、売買代金の2/3を前金として受けった
  • 2年目、売買代金の残り1/3を受け取った

というケース(国税不服審判所での裁決:所得税)では、

  • 前金(全額の2/3)の受け取り日=書類の引渡し日=所有権移転登記の日
  • 契約書からも客観的に前金で引き渡す旨の合意が分かる
  • 買い手側の会社従業員からもその旨回答あり

といった事情をもとに、3分の2を受け取った年に売ったとされました。
(平成6年2月25日裁決)

土地の売買代金の変更があったときは?

これは法人税に関する国税不服審判所の裁決ですが、

  • 1年目、当初の契約で売買代金を決めて、その代金を受け取った
  • 2年目、地積が間違っていたことが分かって、覚書で売買代金を改定した

というケースでは、

  • 買主が当初代金の支払い後、所有権移転登記を完了し
  • 買主が実際にその土地を支配していた

といった事情をもとに、1年目に売ったとされました。
(昭和59年6月25日裁決)

こういった裁決事例は、個別の事例なので、いまご自身が行っている取引も同様に判断してよいとは必ずしも言えませんが、参考にはなります。

通常は、売買代金の大部分の支払いを受けて、所有権移転登記申請に必要なすべての書類を引き渡した日が、土地を売った日(年)になります。
(昭和62年1月30日裁決、所得税基本通達36ー12)