アマチュアスポーツクラブの消費税の課税区分

「1-164 アマチュアスポーツ競技団体に係る消費税の取扱い」というタイトルで、国税庁消費税課の消費税審理事例検索システム(平成12年)という資料があります。

古いもので、前提として「日本体育協会(現:日本スポーツ協会)傘下のアマチュアスポーツの競技団体が授受する料金等」ではありますが、いまも参考になるところがあります。

収入と支出とが混ざっているので、若干読みにくい資料ではありますが。

日本スポーツ協会傘下の団体

No.課税不課税備考
競技大会開催1参加料(参加者より徴収)役務の提供の対価に該当
1参加料(通常個人でプレー料金が徴収される場合のプレー料金部分)ゴルフ・ボウリング大会のプレー費等
2入場料収入
3施設使用料控除対象
4協賛金(広告・宣伝性がある場合)
5放送・放映権料
6広告料(プログラム等を含む)
7大会公認料名義貸料
8開催権の貸与
出版物等9出版物(ルールブック・会報等)有料配布
9物品販売(バッチ・ネクタイ等物品)
登録認定等10入会金、会費、通常会費
11認定料資格を与えるもの
12登録料入会金の取扱いに準ずる(手数料は課税)
13審査料(段位その他)
14用器具検定・認定料
講研修会15講習会・研修会受講料
寄附金、負担金16個人負担金(海外派遣)
17寄附金・補助金・助成金
標章18マーク・標章等使用料

参加料(参加者より徴収)不課税とは?

1行目の、競技大会開催の参加料を参加者から徴収した場合は、不課税とされています。

でも備考で、「役務の提供の対価に該当」とあります。

対価なら課税なのでは? と一瞬思いますよね。

アマチュアスポーツ大会では、大会の主催者が参加料を取るのに対して、アマチュアスポーツ競技団体が、その総額を参加者の数で割った金額を参加者から徴収して、そのまま主催者に渡すということが行われます。

この場合は、競技団体としては、参加者からもらったお金は、主催者に向かって通過するだけなので、団体自体にとっては、不課税の収入であり、支出ということになります。

主催者側は、課税売上(役務の提供の対価)となりますが、反対側は、参加者個人=最終消費者となり、課税仕入れは立ちません。

この場合、競技団体としては、参加者から預り金で受けて払いだすか、立替金として払って参加者から回収するかという処理をすることになるでしょう。

収益・費用科目を使っていても、実態として、主催者に払う参加料総額=個人から徴収した参加費 となっていれば、不課税(ここ数年、国税庁は不課税と言わず、対象外といったりします)と主張することもできそうです。

通常会費は原則不課税だけど、課税とされた例も

サッカーチーム モンテディオ山形の会費に消費税が課税された件

入会金、通常会費は不課税(対象外)と、この表は示しています。

これは、共益的団体(一般社団法人)が、その費用を賄うために受け取る会費が不課税なのに準じた扱いになっています。

ただ、名目・勘定科目が会費だから、対象外になるのではありません。

リンク先の記事では、会費に消費税が課されたという事件の概要が載っています。

ここでは、会費を2倍払えば、2倍のサービスを受ける権利がもらえるという対価関係があったので、課税されたという事例です。

この例は、上記のアマチュアスポーツ競技団体ではなく、J2のプロサッカーチームであったので、一概に類似事例ではありませんが、参考になると思います。

なお、収益事業の課税対象とはならなかったとのこと。

先ほどの表で消費税課税とあっても、収益事業ではないものもあるので、その競技団体・スポーツクラブがNPO法人などの場合、消費税と法人税の両方の取扱いを判断する必要があります。

仙台国税不服審判所でクラブが負けた事例

勘定科目名という形式で判断してしまいがちになりますが、税金は何ごとも実質で判断します。

サッカークラブは国税不服審判所で争いましたが、負けてしまいました。

現在は、公益社団法人山形県スポーツ振興21世紀協会として、またトップチームは株式会社モンテディオ山形という形に変わっているようです。

○ 請求人は、本件会費について、県のスポーツ振興事業の運営に協力するための会費であり、課税資産の譲渡等の対価には該当しない旨及び本件会費のうち本件各特典が利用された部分を超える部分については、役務との間に明白な対価関係がなく資産の譲渡等の対価には当らない旨主張する。

しかしながら、本件各会員者は、県のスポーツ振興事業の運営への協力並びに金額換算が可能な本件各特典及び金額換算が困難な本件各特典について価値観を見出し、これらのサービス、便益を受ける資格を得ることを目的として社団法人に入会するものと推認される。したがって、本件各会員は、会員としての資格を取得することにより本件各特典を受けることから、本件会費と本件各特典の間には、明白な対価関係があると認められる。

以上のとおり、本件会費は、事業者が事業として対価を得て行う役務の提供である課税資産の譲渡等の対価と認められ、この場合の役務の提供に係る対価の額は、提供すべき本件各特典の利用率による価額で判断するのではなく、当事者間で授受することとした対価の額とするのが相当である。(平15.9.25仙裁(諸)平15-8)

編集後記

佐野元春「THE SUN」を久しぶりに聴いています。古びない音楽、大人の音楽だなあ……と。