NPO法人の収入の対価性・簡易課税の事業区分を判定する

NPO法人の活動計算書において、収益の部(経常収益)は、

  • 受取会費
  • 受取寄附金
  • 受取助成金等
  • 事業収益
  • その他収益

に分かれます。

事業収益とその他収益のうち非課税となる受取利息などのほかは、消費税のかかる収入にあたるのが原則です。

事業収益は、通常、対価としてもらうお金だからです。

対価かどうかの判断基準を、各収益にあてはめてみると

他方、受取会費・受取寄附金・受取助成金等は、一般的には消費税がかかりません。

消費税がかかるか、かからないかの判断基準は、「その収入が、対価であれば、かかる。対価でなければ、かからない」です。

対価とは何か

対価とは何でしょうか。

やはり、漢字一文字ずつに分けて考えましょう。

「対」は、「つい」とも読んで、「AとBは対になっている」などといいます。

NPO法人が、そのお金を払ってくれる人に対して、何かをしてあげるという場合、そのお金が対価になります。

受取会費は対価か

「会費を払ってくれる人には、会報を送ってるんだけどな……」という場合、一見、会費が、会報の対価に見えます。

でも、会員の方からすると、会報が読みたいから、会費を払っているのでしょうか?

あまりそういうことはないかと思います。

NPO法人の趣旨に賛同して会員になっており、会報に対してではなく、NPO法人の提供するさまざまなサービスを受けることを目的に会費を払っていると思われます。

こういうふうに、このお金が、このサービスに対応しているという明確な関係がない限り、「消費税がかからない」としてよいとされています。

その場合、会費の請求書にも、「これは対価ではないので消費税の課税対象外です」と書いておけばよいです。

同業者団体(ナントカ協会)からの会費の請求書にコレが書いてあると「できる」と思われる – 税理士 木村将秀のブログ

受取寄附金は対価か

受取寄附金はどうでしょうか。

寄附金は、対価でないものの代表格です。

ふるさと納税のせいで、寄附すると何かもらえるみたいなイメージがついてしまっていますが、ふつうはもらえません。

私が母校に寄附したら、年末にカレンダーが送られてきましたが、私はカレンダーがほしくて寄附したのではありません。

先日もちょっと寄附をしましたが、箱にお金を入れただけで、そのお金に対応した何かをしてもらったこともありません。

寄付という名前と、実質が一致していれば、消費税がかからないと考えてよいです。

寄付という名目で、金額に応じたサービスを提供していたら、消費税はかかります。(会費名目であっても同じです)

受取助成金等は対価か

受取助成金等はどうでしょうか。

「等」とは、「補助金」の意味です。自治体の政策を遂行するための助成金や補助金をもらう。

これは、何かをすることを条件に受給できるものなので、一見、対価に見えるかもしれません。

でも、補助金をもらうために、その自治体に対して、NPO法人が何かをすることはないですよね。

その助成金等の目的に応じた活動をするだけです。その活動は、自治体に向けられたものではありません。

何かをしてあげる対象と、その対象から入金があることが、一対一・一対多の対応になっていなければ、対価ではないと考えます。

補助金・助成金を払ってくれる対象と、活動の対象が向い合せになっていないことが、消費税のかからないポイントなのです。

事業収益などの対価の金額が1000万円を超えたら

そういった、対価でない収入を除いたところで、事業収益・その他収益の対価の合計が1000万円を超えたら、NPO法人といえども消費税を納めるときがきます。

1000万円を超えた事業年度の2年後から、消費税の申告が必要になります。

消費税額の2割を納めればいい2割特例というのを聞いたことがあるかもしれませんが、対価が1000万円超になったら、2割特例は使えません。

NPO法人によっては、消費税のかかる仕入れがほとんどないことも考えられます。

経費はほぼ人件費だけだという場合、何もしないと、いきなり収入の10/110の大半を納税する必要が出てきてしまいます。

そこで、1000万円を超えたら、消費税課税事業者届出書にプラスして、簡易課税制度選択届出書を出しておきましょう。

出さないときと比べて、大幅な納税額の減少が見込めます。

NPO法人の簡易課税の事業区分は

NPO法人の活動のうち、人の手によるサービスにあたるものは、簡易課税制度の第5種事業(サービス業)にあたります。

日本標準産業分類にしたがうと、NPO法人は、「サービス業(他に分類されないもの)/政治・経済・文化団体/他に分類されない非営利団体」に該当するからです。

ただし、仕入れたものを売る事業は、事業者に売るなら第1種事業、個人に売るなら第2種事業になります。

法人が所有する備品等を下取りに出す場合や、こども食堂などの場合は、第4種事業になります。

対価であるものについて、さらに区分したほうが、納税額が減少しますので、収入ごとに「事業区分の判定フローチャート」で判定することが必要です。

NPO法人としての収入全体が第5種事業になるのではないことに注意です。もし、そのように処理すると、納税額が多くなりすぎてしまいます。

取引の入力ごとに正しく事業区分を登録したほうがおトクです。

編集後記

お客様から、「今年もお願い」と2024年分の確定申告のアポが入りました。年内にお会いして、1月中には申告かなと思っています。