法人成りとインボイス・消費税の注意点を確認する

個人事業者の場合でも、消費者向け・中小企業向けのビジネスをしていると、インボイスを求められないこともあるので、インボイス登録していらっしゃらない方もいるでしょう。

つまり、いままで消費税の納税義務がない、免税事業者であったという場合。

個人事業で年商が1千万円を超えたら、その翌々年から消費税の課税事業者になります。

今年1千万円を超えた時点では、何も変わりません。いつもどおりの確定申告をします。

1千万円を超えたかどうか

今年、売上が1050万円あった。

でも今年、納品した商品の不良が発覚して、年をまたいで去年の売上返品が100万円発生した場合。

これは、1000万円の判定上、今年の売上からマイナスしますので、売上高は950万円ということで、翌々年は課税事業者にならずに済みます。

他方、今年、得意先から不良債権の最終配当の連絡があって、代金が回収できなくなった。いわゆる貸倒れですが、これが200万円あっても、売上高からは引くことができません。

返品と貸倒れで扱いが違いますので、注意しましょう。

また、返品があったときに、売上のマイナスではなくて、誤って費用として計上すると、1000万円を超えたかの判定を間違える可能性もあります。

1000万円かどうかは、税抜売上げで判定するのですが、免税事業者の時の売上は、税抜きにしません。

1050万円を÷1.1したら1000万円を切った!と喜んでいてはいけません。免税事業者のときの売上に税抜処理はNGです。これは売上返品も同じです。

個人の場合は、その年に家事消費があれば、それも1000万円の計算に含みます。

また、事業用の資産を売った収入も含めます。事業所得には出てこず、譲渡所得に入っているのでもれがないようにしましょう。

利息などの非課税のもの、預り金収入など消費税のかからないものは含めません。

やはり1千万円を超えていたら

ひとつは法人成りです。

1千万円を超えた個人事業を廃業して、同じビジネスを法人で行えば、個人の1000万円の売上げは法人には関係がありませんので、資本金1000万円未満で設立すれば、やはり2年間、免税事業者になります。

売上の大半を占めるお客様からインボイスを求められなければ、法人でも登録する必要はありません。登録したら、課税事業者になってしまいます。

設立初年度も丸一年の事業年度を確保すれば、3期目から課税事業者となり、消費税の納税をあと送りにできます。

なお、法人成りするときは、個人事業で使っていたPC等の設備を法人に売却するのが一般的です。

個人でインボイス登録をしていなければ、簿価で売れば譲渡所得の課税は抑えられます。

ただし、すでに個人でインボイス登録していたら、その、簿価で売った収入に消費税がかかります。

いっぽう、法人成りにはデメリットもあるので、個人事業を継続するという選択肢もあります。

1000万円を超えた決算をしたら、その翌年、忘れないうちに、消費税課税事業者届出書(基準期間用)を提出しましょう。

「課税事業者課税事業者選択届出書」というのと似ているので、混同しないように注意です。

これと同時に「簡易課税制度選択届出書」を提出するかどうかは、ちょっと検討が必要です。

簡易課税制度を選択するかどうか

いずれにしても、今後、消費税を納める額のイメージを持っておきましょう。

国税庁の確定申告書等作成コーナーでも消費税の申告書(個人のみ!)がつくれますので、ためしに今年の売上・経費を入力してみると、課税事業者になったあとに同じくらいの売上ならば、いくらくらいの納税かが分かります。

1000万円を超えた事業者は、一般課税か簡易課税か、課税事業者となる年度が始まる前に選んでおく必要があります。

一般課税と簡易課税の納税額シミュレーションをしてみましょう。

「税額の有利不利よりも、事務負担の少ない簡易課税を選ぶ」という判断もありです。経費の支払い先がインボイス登録しているか、気にする必要がありませんので。

なお、2年前の売上が1000万円を超えていたら、2割特例は使えません!

2割特例は、もともとずっと免税事業者の予定なのに、取引先から求められてインボイス登録をした人向けの特例だからです。

編集後記

池袋で、立教税理士会の寄附講座を受講して、講師の先生にごあいさつ。