来年2025年度の税制改正の概要が発表されました。
「税制改正大綱」といいます。
個人事業主、フリーランスの方への影響をまとめました。
減税:基礎控除10万円アップ
基礎控除が、従来の48万円から58万円になります。
いぜん高額所得者(合計所得金額2350万円超)は基礎控除がなくなる例外は残っています。
「2350万円なんて高額所得、縁がないよ」と思われるでしょうが、相続した不動産を売った年は、あっさり超えてしまうことがあります。
そのときだけ気にして、通常は、何もせず減税を享受できます。最高税率20%(課税所得330万円~)の方なら2万円の減税です。
減税:iDeCoの拠出限度額7,000円アップ
フリーランスの方(第1号被保険者)は、iDeCoの月額68,000円までの掛金上限が、+7,000円で月額75,000円になります。
ただし、従来から国民年金基金の掛金の額(40代は月額10,000円~)、国民年金の付加保険料(月額400円)も、この限度額の中に含まれています。
税率20%の人が掛金を増やせば月額1,400円×12カ月で16,800円の減税。
細かい話ですが、国民年金基金の掛金上限も月額75,000円になっています。
減税:生命保険料控除(一般生命)だけで6万円控除
従来は、生命保険料控除で、通常の死亡保障に加入していると、保険料がいくらであれ控除上限4万円でしたが、これが上限6万円になります。
ただし、条件があって、23歳未満の扶養親族がいる場合に限ります。
加入状況によっては、保険料は変わらずに控除だけが2万円増える人もいるでしょう。その場合、税率20%の人なら4,000円の減税。
医療保険・個人年金保険と合わせて上限12万円に達している方にとっては、減税なしです。
しかし、フリーランスにとっては、支払額=所得控除の小規模企業共済を生命保険替わりと考えれば、そもそも死亡保障に入らない方が節約できているともいえます。
減税:特定親族特別控除 子が年収を増やしても世帯の税金は減らない
大学生の子がある個人事業主の方(士業の方も)は、大学生の子がバイトをしすぎないよう、お願いしている方もおられるのではないかと思います。
子の給与収入が103万円を超えると、ご自分の63万円の所得控除が消滅し、一気に126,000円(所得増がすべて税率23%分の場合)の増税になってしまったからです。
立教大学の大学生(寄附講座の受講生)からは、103万円の壁は低すぎる(時給が上がっているので働く時間が減らされる)、勤労学生控除があっても親の扶養控除がなくなるので結局103万円までしか働けない、壁が変わらないのはおかしい、という意見をよく聞きました。
「いまの法律が現状に合っていない」という声が高まると、税制が変わるという、民主主義と税金の関係を実感できた年であったと思います。
これまで、子の給与収入を103万円以下にするよう、お願いしていたかもしれませんが、今後は額面で150万円までにしてよいことになります。
神奈川県の最低賃金1,162円で計算すると、404時間、追加で働けます。
給与収入150万円に対し、給与所得控除が65万円で、子の合計所得金額は85万円。この金額以下であれば、従来の特定扶養親族の扶養控除63万円を維持できます。
子自身の税金については、給与収入150万円に対し、合計所得金額が85万円。ここから、勤労学生控除27万円と、基礎控除58万円を引くと課税所得金額0円となり、税金はかからずに、手取りが増えます。(社会保険料は考慮せず)
結果、子がバイト代を103万円以上稼いでも、世帯全体としては手取りが増えることになります。
さらに、配偶者特別控除のように、150万円を超えたらいきなり扶養控除63万円が消滅するのではなくて、徐々に親の所得控除が減るしくみになるので、就業調整に神経質にならずに済みます。
住宅ローン控除は、19歳未満の子がいる方はちょっと優遇されるなど、子育て世代への減税策が目立った改正でした。
この減税を何で補っているか。法人税や登録免許税などが増税気味なので、そのあたりでしょうか。
あと、退職所得・公的年金が増税されたり、将来増税される可能性があります。
国の支払いより税収が少ない状態が続く以上、傾向としては増税気味になる前提でいていいでしょう。
選挙結果しだいで、「「どこから取るか」が変わることはありますが。
編集後記
NPO法人の消費税の税務相談に乗りました(相談員派遣)。いつも「すっきりしました」と言っていただけるのがうれしいお仕事です。