村上春樹には税に関する格言があります。「紳士とは、払った税金と、寝た女性について多くを語らない人のことです」。「独立器官」に登場することで知られていますが、同様の内容は初期の作品で既出です。
また、『村上朝日堂 スメルジャコフ対織田信長家臣団』でも、税理士に助けられている旨の発言がありますし、作中にもときどき税理士が登場します。
木山泰嗣『税法読書術』は、『税法思考術』『税法文章術』と並ぶ税法エッセイシリーズですが、いちばん読みやすいです。弁護士・学者サイドのお話が多いですが、「村上春樹」という単語が頻出する税法の本でもあります。
税法は論理の世界だが、人は感情で動く。この点、故山本守之先生の文章と通じます。感情、情緒を体感させるのが小説なのだと。論理だけでは人生を説明できないから、村上作品は論理的でないという批判は失当であるとの指摘は、共感するところ大であります。
2019、大蔵財務協会