2割特例・簡易課税なのに経理処理方法を税抜経理にしてしまった場合の注意点

消費税の経理方式は、税込経理をおすすめしています。

その理由は、だいいちに、入力した売上金額が、そのまま売上金額となって、分かりやすいこと。

また、決算時の仕訳の数が少なくなり、手間がかからないことが挙げられます。

それでも、税抜経理方式を選択してしまった場合の注意点をお伝えします。

会計ソフトによっては、税抜経理方式が初期設定で、知らない間に税抜経理で処理している場合があります。

まず、会計ソフトの設定を確認しておきましょう。

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簿記の知識と、実際の消費税との違い

簿記の授業で習う知識では、税抜経理方式では、消費税は損益に影響しないことになっています。

一方、税込経理方式では、消費税が損益に影響します。

税込経理では、収益・費用が税込金額であるために、利益も大きくなってしまっています。

そこで、消費税の納税分、租税公課という費用を計上し、税抜経理方式と同じ利益の額にします。

単純な例で、税込収益1,100円、税込費用660円を考えていきます。

税抜経理方式なら、税抜収益1,000ー税抜費用600=利益400円です。

税込経理方式なら、税込収益1,100ー税込費用660=利益440円です。40円多いですね。

そこで、収益の消費税100ー費用の消費税60=40円が納税額ですので、これを租税公課という費用にします。

すると、税込経理の利益440ー租税公課(消費税の納税)40円=利益400円で、税抜経理方式と同じになります。

簿記の知識で見ると、税抜経理方式の場合、消費税は利益に影響しないように見えます。

しかし、それは、消費税を一般課税で申告する場合の話です。

そうではなく、2割特例や簡易課税で計算する場合、消費税の納税額は「収益の消費税-費用の消費税」という計算でないため、問題が出てくるのです。

消費税分としてもらったお金はどうなるか

税抜経理方式であっても、会計ソフト上では、収益は税込金額で入力し、自動で税抜処理されるものがほとんどです。

実際の入金額である税込金額をもとに会計ソフトに入力しますので。

それに、いったん税込収益の額を入れてもらわないと、消費税の納税額の計算ができないからです。(原則として、消費税額は、税込収益の合計を税抜してから税率をかけるため)

そのため、感覚的には税込経理との違いを感じません。

でも、税抜経理の場合、売上を1,100円と入力しても、売上高のデータ(総勘定元帳)を見ると、税率分(ここでは10%)少ない1,000円になっています。これが自動税抜処理です。

差額の100円はどこにいったかというと、仮受消費税等のデータに入っています。

税抜経理方式では、収益のデータには消費税額が入っていないものの、その分のお金はもらっているわけです。それが負債の部の「仮受消費税等」に残ります。

2割特例・簡易課税&税抜経理は雑収入がつきもの

税抜経理方式特有の決算整理仕訳が、仮受消費税等と仮払消費税等(払った金額-税抜費用の額)の清算仕訳です。(以下の金額はざっくりです)

仮受消費税等 100
__仮払消費税等 60
__未払消費税等 40

一般課税なら、未払消費税等の金額は、ほぼ「仮受消費税等-仮払消費税等」の金額です。

実際には多少差額が出ますが、微々たるものなので、雑収入または雑損失で処理します。

これが2割特例だと、仮受消費税等の約20%を納税するので、仮受消費税等が100なら、未払消費税等は20になります。
すると、相殺(100-60-20)しても、あと20も差額が残ります。

仮受消費税等 100
__仮払消費税等 60
__未払消費税等 20
__?????? 20

この、「??????」が「雑収入」として、税金(所得税または法人税)のかかる収入になります。

税抜経理方式の場合、必ず、消費税申告書の納税額と同額の未払消費税等を計上し、仮受消費税等-仮払消費税等-未払消費税等で残った額を、その年度の雑収入または雑損失にする必要があります。

その年に多額の設備投資をしたのでなければ、多くの場合、雑収入になります。

特に、2割特例や簡易課税では、未払消費税等の額が小さく計算されるため、雑収入の金額が多額になりがちです。

雑収入になるのは、その分、お金をもらっているからです。

お金をもらっているのに、納税しなかった分は、手元に残るので、所得にかかる税金の対象となります。

税抜経理方式の場合、「決算が終わった!」と思ったら、

  • 仮払消費税等・仮受消費税等の残高が0円になっていること
  • 未払消費税等の残高が、消費税申告書の1枚目最終行の金額と一致していること
  • 雑収入(消費税清算差額)が計上されていること

を確認するようにしましょう。

2割特例や簡易課税では、税抜経理にしても、結局、消費税が利益に大きく影響してしまいます。
なので、税抜経理にするメリットがないのです。

「税抜経理、面倒だな」と思ったら、次の事業年度から税込経理方式に変更することをおすすめします。

編集後記

1日1新:ドトールコーヒー地下鉄関内駅店、mineoアプリ、mineoパケット放題Plusオプション申込

今日は、関内の横浜商工会議所、その後は蒔田の横浜南青色申告会へ。