会社を設立するとなると、役員報酬を決める必要があります。
もともと個人事業でやっていたのであれば、その事業所得の金額を、少し下げたくらいと考えてよいです。
最初から法人設立の場合(設立時からお客さんが決まっているなど)は、そのときの利益計画をもとに、シミュレーションしてみることになります。

160万円の壁以下にすると?
役員報酬(給与所得)は、2025年分からの改正予定で、年160万円以下なら税金がかかりません。
税金を少なくしたいだけなら、年160万円にするという方法もありますが、おすすめしません。
他に収入がない場合、役員報酬の額面が年160万円では、手取りから生活費を引くと、預貯金を取り崩す生活になるからです。
税金が減る以上に、手持ちが減ってしまっては意味がありません。
また、役員報酬が低いと、今度は会社に利益がどんどん残ることになります。
この利益は、最終的に役員退職金で個人に戻すのが税金上有利なのですが、役員報酬が低いと、退職金も低くなってしまうからです。
生活費を考慮する
年160万円の役員報酬では、月13万円です。
ここから税金や社会保険料が引かれますので、手取りは年129万円ほど。
月額では10万円ちょっとになります。
現実の生活費はどうでしょうか。家族がいると、なかなか月の手取りが10万円では厳しいのでは。
家計簿から生活費を把握して、最低限必要な役員報酬を逆算してみましょう。
※ここでの計算は、神奈川県横浜市の住民税・社会保険料を前提にしています
役員報酬を引く前の利益がいくら必要か
仮に、月間生活費を平均して19万円としてみましょうか。
個人として毎月19万円の生活費を払っても、貯金が減らない役員報酬の額は、額面で月額25万円です。
これを12倍すると、300万円。
さらに逆算すると、この役員報酬を出すための法人の利益はいくらになるか。
役員報酬300万円は経費になり、さらにここから、会社が負担する社会保険料 約48万円がかかります。
すると、「役員報酬を引く前の利益」が、約350万円は必要ということです。
給料を決めるときの利益は、役員報酬を引く前の利益で考えましょう。
経営計画を立ててみて、この利益が350万円以上になっているでしょうか。
で、ここでまた税金の話に戻るのですが、「350万円の利益+役員報酬300万円」で法人設立をすると、実は個人のほうが税・社会保険料の負担が少なくなるケースがあるのです。
個人事業主としてお客様と取引ができるのでしたら、最初から法人設立をしない、法人成りをしないという選択肢も残しておきたいものです。
では、法人の税金・社会保険料の負担が、個人とトントンか、有利になるのはどのくらいいか。
私が概算したところ、515万円(青色申告特別控除後の事業所得では450万円)を超えたくらいが目安です。
すでに個人事業をされている方で、これからも利益が増える予定であるとか、まだ5年以上事業を続けるつもりであるという場合は、いわゆる「法人成り」を検討してもいいでしょう。
厚生年金や協会けんぽに加入することで、給付が増える側面もありますので。
編集後記
たまってしまった本を整理・処分する週末でした。

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランス・独立間もない個人事業主・法人設立を検討中の方のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細