「バーニング 劇場版」日本の現実に直結したフィクション(ネタバレあり)

村上春樹作品は、1995年までの初期が軽め、中期以降は重めの内容に分かれています。原作『納屋を焼く』は初期の短編小説なので軽めの会話があるのですが、映画版では、そういう明るいポイントは慎重に取り除かれています。

一方、付け加えられたポイントは、性と暴力、井戸(井戸のように明かりが一瞬差し込む部屋)、猫の喪失、父への憎しみという、中後期の村上作品の暗いモチーフです。

お父さんの裁判のシーンで、「椅子を振り回して家具を破壊した」という証拠に、経験則をあてはめて、「暴力が故意である」と事実認定していて、おお訴訟法の世界と思いました。それを反面教師に、主人公は証拠を残さない方法を採ります。

父を憎むのは、父が自分と同じ性格だから。その性格が陰惨な結末を生むのですが、これって、まったく現代の日本ですね。最後に牛まで奪われて、孤独になりバーニングするしかない人々。映画の後味は悪いですが、現実も同じなのです。