自宅の生前贈与を考えるのはどういうときか

夏休みは親族が集まる季節です。
私も先日、親族で熱海に旅行に行きました。

参加者の年齢によっては、相続とか、終活の話が出る時期でもあります。
いまの住まいについて、相続や贈与といった話題も出るかもしれません。

基本的には、住宅については、相続によって引き継ぐほうが、税金的には有利です。

贈与で財産を減らすことを抑制する目的で、相続税より贈与税の税率が高いから。
また、相続税で住まいを失わないように、税制のサポートが多いからです。

したがって、親子間・夫婦間で住宅を贈与するのは、珍しいケースといえます。

親戚の集まる地元のお祭り

親の土地に子が家を建てるときは、土地の贈与は不要

「親が持っている土地に家を建てたい場合、土地の贈与を受ける必要があるか」とのご質問を、以前いただいたことがあります。

その必要はありません。親の土地に、子が家を建ててよいです。
兄弟姉妹の扱いは平等か、住宅ローンへの影響を銀行に相談したか、といった税金以外のチェックポイントはありますが。

その場合の土地は、相続のときに建物の所有者が受け継ぐのがよいでしょう。(建物所有者の居住を確保するため)
あえて生前に贈与しなくていいのです。

あえて生前に贈与するケースを考えてみました。

事業リスクの事前回避策として

親の自宅(建物、土地)の生前贈与は、例外的なケースとしてありえます。

所有者が事業経営をしており、借入金の個人保証をしていることもあるでしょう。
高額な損害賠償を請求されることもあるかもしれません。
万一返済できなくなった場合、所有している自宅が取られることもないではありません。

このリスクを回避するために、経営者が所有している自宅を、贈与税の配偶者控除(通称:おしどり贈与)を使ってあらかじめ贈与することが考えられます。
いわゆる、倒産隔離です。

おしどり贈与とは、20年以上結婚している夫婦間の居住用財産(又は購入用資金)の贈与のことです。

ただし、配偶者に贈与を行う時点で、経営者本人の資力に余裕があることが求められます。
支払い問題が顕在化する前に贈与しておく、ということです。

すでに無資力になっており、この贈与をしたら債権者が支払いを受けられなくなると知って行う贈与は、債権者から詐害行為取消権を行使されるリスクが高いです。

税金の滞納であっても同様です。
税務署も詐害行為取消権を行使することがあります。

居住の確保策として

他に考えられるのは、問題のある親族がいて、居住がおびやかされるようなときに、配偶者や親族(おしどり贈与は使えませんが)の居住を確保する目的で住宅の贈与をするケースでしょうか。

いずれも、所有者に万一のことがあったときに、残された親族の居住の確保のために実行するケースです。

住宅の贈与に関しては、上記のように、節税になるとかトクするとかの観点ではなく、贈与が必要かどうか、そのコストを負担できるかどうか、で考えるべきものです。

おしどり贈与は、確かに2000万円+110万円(贈与税の基礎控除)までは、申告すれば贈与税はかかりません。
しかし、贈与の場合、登録免許税・不動産取得税も高額になります。

相続税がかかる場合でも、通常、贈与税よりは低くなります。
相続財産が相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)以内に収まれば、相続税はかかりません。登録免許税も贈与より安く済みます(0.4%)し、不動産取得税はかかりません。

トラブルによって居住がおびやかされるケースを除けば、あえて生前に住宅を贈与するシーンは、あまりないように思います。

近況報告

地元のお祭り2日目。子どもたちは夏祭りを堪能したようです。

1日1新:サンマルク 東戸塚オーロラモール店