以前、財務省のメールマガジンで、「子に贈与税の特例を使って一括贈与したら、子が、孫を連れて遊びに来てくれなくなってしまい、悲しい」というエピソードが紹介されていました。
節税を考えて実行したことで、思いもよらぬ副作用が発動してしまった、典型的な失敗例です。
税金は減ったかもしれませんが、孫の顔を見る機会を失ってまで、減らしたかったでしょうか?
社長の立場にある人にとっても、節税・社会保険料節約だからと勧められ、実行して、あとで困るケースはあります。

税金のことだけ考えればセオリーなこと
一時的に会社の業績が悪くなり、社長の個人資産を会社に投じた。
よくあることではあります。
すると、「役員借入金」という勘定科目が、貸借対照表・負債の部(固定負債)に登場することになります。
これ自体に、良いも悪いもありません。
他方、いままで高めの役員報酬を取っていたけれども、役員借入金のことがあるので、この返済を優先して、社会保険に加入できる最低ラインまで役員報酬を下げた。
これだと、役員報酬に所得税もかからないレベルになります。
甲欄なら源泉徴収もいりませんし、特別徴収も初回の5,000円ていどを1回天引き・納付するだけで終わりです。
また、年齢的なこともあり、役員借入金は、全額が自分の将来の相続財産になると聞いて、減らそうと思った。
これはセオリーです。税理士から提案されることもあるでしょう。
私も、します。ただし、条件があります。
役員報酬を下げて、借入返済を優先していいのは
いまの手法を採用していいのは、原則として、金融機関から、運転資金・設備資金の借入がない場合に限ります。
銀行などからお金を借りているのに、年々役員借入金が減っていくのは、貸し手の銀行からしたら、気持ちがいいものではありません。
「運転資金が必要と言うから貸したのに、明らかに役員借入金の返済にお金を使っている……」
資金使途違反を問われるリスクがあります。
もちろん、いきなりそれが原因で銀行から怒られる(一括返済を求められる)とは限りません。
会社の業績がよく、年々売上・利益が改善されている、または土地を担保に入れているなどしており、返済に滞りがなければ、スルーされることもあります。
そうでなければ、外部から融資を受けたら、役員借入金の返済は、しばらく止めたほうがいいのではないかと。
役員報酬を下げるにしても、生活費を賄えるくらいの金額にとどめましょう。
税務署と金融機関は、見方が違う
さきほど、役員借入金を計上すること自体、いいも悪いもないと書きました。
それが実際に社長が出したお金であれば、です。
税務署は、あまりに役員借入金が多いと、別の見方をします。
預金/売上 の仕訳を入れるところ、預金/役員借入金 に偽装したのではないかと。
もちろん、偽装していないなら、社長の個人財産または親族の財産から出した、と説明できるならよいです。
反対に、社長個人などにお金があるように見えないのに、役員借入金が大きすぎると、疑いのもとになります。
そういう場合は、私から事前に確認させていただくこともあります。
税金は、取引を実行するか否かを判断するための、ひとつのポイントでしかありません。
税金以外のことも考えたか? これを実行することで、生じうるリスクを挙げられたか?
そんなことも、ご一緒に考えていければなと。
近況報告
午前中は横浜商工会議所の仕事、ランチは関内のbenten103で。
TICADの関係者らしき人を見かけた。
午後は記帳代行をして、夕方は妻の買い物についていく。夜にマイナポータルに来た「ねんきん定期便」をチェック。
1日1新:事務所ロゴマークの検収

1980年生まれ。木村将秀税理士事務所・代表。主にフリーランスやNPO法人のサポートをしている。自分で経理・申告したい/顧問税理士をつけたい/記帳代行を依頼したい に対応。特技はウォーキング(最長は戸塚~小田原間 45km 14時間)、趣味はジャズ喫茶巡り・村上春樹の本・SNK対戦型格闘ゲーム。プロフィール詳細