医療費控除になる?医療費控除の明細書ノック

税理士は、日常的に税務上の判断をしているわけですが、確定申告のシーズンは、全国の人々が税務判断をしています。

それが、「医療費控除に入れるか、入れないか」です。医者に行った事実があり、これを医療費控除の対象にしていいのか、大勢の人々が判断している。そう考えると、税務って、みんなのものだという気もしてきます。

医療費控除の対象になるかならないか、その判断基準を見ていきましょう。

なまじ人間が判断するより、AIに判断してもらう?

といいつつ、AIなりチャットボットなりが進歩していますので、疑問があったら、まずはAIに聞いてみるというのも手です。

Bing チャット → Copilot は、かなり広い範囲で回答してくれています。根拠のリンクもあります。というか Bing チャット時代からものすごくパワーアップしていますね。表形式で出力してくれたりもします。

立替払いまで言及しているのはすごい。立替払いというのは、歯科ローンのほか、クレジットカード払い、他の立替払いも含まれます。

Copilot はそこまで言ってくれていませんが、立替払いをしてもらった(通常は治療した)年の医療費控除の対象になります。ローンを返済した年、カード会社が口座から引き落した年ではありません。

国税庁公式の税務相談チャットボットは、まず、質問に対応した項目を提示し、それをクリックすると、該当する短い回答をします。そして、根拠のリンクで詳しい説明が読めるようになっています。

いま、目の前の「医療費控除の明細書【内訳書】」(なんでかっこ書き?)をなんとかするには、けっこう使えるレベルだったりします。

しかし、実際のところ、どういう基準で医療費控除の対象になるのか、その考え方までは見えてきませんね。

医療費控除になるかの考え方

自分の判断でいきなり矯正歯科には行きませんよね(きっと)。ふつうは、町の歯医者さんが、「この子は矯正しないといけないものがある」という判断や助言に従って、紹介されて行くものです。

医療費になるかならないかは、お医者さんなり、国家資格を持つ専門家の判断で行うもの、というのが一つのポイントです。

あと、「予防」は、医療費になりません。歯医者さんで買った歯ブラシ代も対象外です。これらにいくらお金を払っても、虫歯予防にはなりますが、病気は治らないからです。

生命保険や社会保険(高額療養費など)で補てんされる金額の記載

生命保険会社から受け取った入院給付金が、その病院の入院費用より多くなることがあります。

この場合でも、医療費がマイナスになることはなく、 「(4)支払った医療費の額」が0円になるように、「 (5) (4)のうち生命保険や社会保険(高額療養費など)で補てんされる金額」に保険金額を記入します。

通常は同額になりますね。結果的には、どっちも書かなくても同じことですが、同じになるかどうかは、いったんその病院の医療費を集計してみないといけません。

医療費の効率的な集計のしかたは、別の記事で紹介しています。

高額療養費が支給された場合も、医療保険の保険金の受取りがない場合は、計算結果が変わらないので、どこかの行にまとめて記載してしまってもいいです。

ただし、「同じ月」に、同じ病院の保険金の受取りと、高額療養費の受取りとが両方あった場合は、医療費控除の額をできるだけ多くしたい場合、ひと手間が必要です。

高額療養費は、月単位でいくら、という情報しかありませんので、病院と同じ行に入力することができません。

そこで、その月の高額療養費について、その月に行った病院・薬局の支払金額で按分計算をします。(以下、国税庁資料より)

その月の高額療養費×その月に行ったA病院代÷(その月に行ったすべての病院代)=A病院の行の「補てん金」に記載する高額療養費

ここで、保険金をもらった病院に、さきに高額療養費を充てて、あとから保険金を充てるようにすれば、高額療養費として他の病院の医療費からマイナスする(補てんされる)金額が減少して、ちょっとだけトクすることができます。

この計算をするには、医療費の集計にあたって、支払った日付もExcelに入力しなければなりませんので、手間は手間です。

面倒だ? ごもっともです。そういう場合は、どこか金額の多い病院の行に高額療養費を1カ月分まとめて記載しても問題はありません(支払った医療費>補てん金 になるようにします)。ちょっとソンするだけですので。時間を大切に。