法人の方に次々届き始めていると思います、『給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた』。
私もさっそく現物を入手して、一読してみました。
この郵送代などの定額減税の対応費用に税金を使い、住民税・給付金の計算をする公務員の残業代に税金を使い、そのうえ減税までする。財務省はどう思っているのか知る由もありませんが、それはそれとして。
民間としては、これをどう、低コストで乗り切るか、知恵の見せどころです。
ここでは、いかに「各人別控除事績簿」(控除しききれなかった定額減税の繰越、残高管理をする表)を白いままにするか(使わないか)、にかかっていると考えています。
月次減税額の残高管理なんて新しい仕事、できるだけ増やしたくないです。
減税額の残高管理は、給与計算ソフトが対応してくれればいいのかもしれません。
でも、ソフトを自社開発しているところ、日本オラクルなどに外注しているところ、アップデートの見込みのない給与計算ソフトを使用しているところもあるでしょう。
その対応コストをかけるのはもったいないです。これ、1年限りのことなんですから。
会社のしくみをそのままにして、定額減税を乗り切るのは、大変です。会社のしくみを変えられるなら、自社自身を変えて、やりすごしてみませんか。
6月の人件費支給が給与→賞与の順番なら、賞与→給与に変えてみる
「各人別控除事績簿」のような表を使わないで済ますためには、1回の人件費支給で定額減税額を控除しきって、繰り越させないことが肝要です。
そのためには、会社のしくみとして、通常、6月支給給与のあとに賞与を出していたのでしたら、今年に限って、先に賞与を出すことを検討してみましょう。
定額減税は、6月以降初めて支給する給与・賞与から実施することになっています。
通常、ボーナス支給月は、賞与→給与の順番で出す会社が多いから、定額減税はこのような制度になっていると考えられます。
でももし自社が、このパターンにあてはまらず、給与→賞与で出しているのでしたら、金額の多い賞与を先に出すにように変更してみましょう。
そのほうが、源泉徴収税額が多くなり、1回で3万円~ の定額減税を取り切る可能性が高まります。
「各人別控除事績簿」に載る人数が少なくなることが期待できます。
賞与の支給月数が夏季<冬季なら、夏季>冬季に変えてみる
賞与は、各人のはたらきぶりを査定して、基本給の何カ月分、といったふうに計算しているかと思います。
通常、夏季賞与(6月支給)より、冬季賞与(12月支給)のほうが金額が大きいケースが多いのではないかと。
そこで、これはある程度、資金に余裕がある会社向けの対策ですが、今年に限って、夏季賞与を冬季賞与より多くしてみるのも手ではないでしょうか。
年間トータルの人件費は変えないで、例えば、通常、夏季2カ月分・冬季4カ月分のところ、夏季4カ月分・冬季2カ月分にしてみる。
6月に支給する賞与の額をできるだけ大きくすれば、それだけ、定額減税を1回の支給で控除しきれる可能性が高まります。
1回で控除しきれば、もう、あといくら減税すればいいかの管理は不要となり、次回以降の支給からは、通常の源泉徴収税額の計算でよくなります。
同族会社なら、無理して控除対象の人数を把握しない
この定額減税のむずかしいところは、通常の年末調整の書類では把握できない、同一生計配偶者や扶養親族の数を確認する必要があるところです。
しかし、これを完璧にやることなど、そもそも不可能ではないでしょうか。
従業員のなかには、家庭の事情を会社に知られたくないと、配偶者や扶養親族をすべて書類に記載していない人もいます。
それで控除や減税が受けられなくなっても、です。定額減税のために、あらたに情報収集しても、はたして正確な数字が集まるかどうか。
でしたら、いまわかる範囲の配偶者・親族の情報をもとに、最低限、非居住者を排除して、月次減税額を決めてしまってもいいのではないかと思います。
もし、6月2日以降に判明したら、それは、年末調整のときにあらためて追加して、還付してもよいのですから。(会社に知られたくない人は、黙って確定申告しますし)
※6月2日以降に異動が判明しても、6月1日時点で計算した月次減税額を修正する必要はありません。年調減税額だけ直します。
最低、3万円を6月支給時に控除し、無理して配偶者・親族分を月次の定額減税の計算にいれなければ、1回の支給で控除しきれる可能性が高まります。
もちろん、減税をあてにしている従業員は情報を入れてくるでしょう。
でも、従業員が親族ばかりなどの同族の中小企業でしたら、3万円(本人分)からの控除でいったん取り切ってもらって、「各人別控除事績簿」に載せる人数を減らす方法も、ありではないでしょうか。
1回の支給で定額減税を控除しきるための、3つのアイデアをご紹介しました。
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