簿記の練習量は足りているのに苦手な人の対策

簿記検定や、税理士試験の簿記論は、だいいちに、大量の練習問題を繰り返し解いて、脳に覚えこませる過程が必要です。

「量が質を作る」という言葉が信じられるようになるのが、この簿記の試験勉強です。

簿記にそういう根性論、スポーツとしての側面があるのは間違いありません。
でも、もちろん、根性論だけでは合格はできません。(できたよ、という方もいらっしゃるでしょうが……)

練習はこなしているのに合格できない方は、次のような点を見落としているのかもしれません。

簿記は、投下資本の回収の計算をしている

「投下資本の回収」、村上春樹の長編小説にもよく出てくるくらい有名な言葉です。
縮めると、投資の回収。

会社員・公務員の家庭で育つと、残念なことに、投資の回収という概念を学ぶことなく、社会人になってしまいます。

私も勤め人家庭出身だったので、簿記論には2回不合格になり、苦戦したものです。

預金/資本金 10,000。これが第一の投資です。この元(10,000)を取ろうとするのが会社(事業)です。

第二の投資として、お金を貸せば、貸付金の元本から利息が発生します。
最終的に貸付金の元本を返してもらえば、投資が回収され、利息の分、利益が出ます。

「元本を出していたら、収益も動いているはずだ」と考える必要があるのです。こう考えていると、「複式簿記なのに、片一方だけの処理をしてしまった」というミスを防ぐことができます。

別の言い方をすると、複式簿記は、財産と利益とを同時に計算しているのです。
資産や負債が動いたら、それに関連して、どんな収益・費用が動くのか、予想して問題を解きましょう。

この感覚をつかむと、自分で商売をするようになったときに、「これは経費になるのかな?」などと考えずに済みます。

いま払ったお金が、事業にとって投資なのか? 回収の可能性があるのか? と考えて、Yesなら経費です。

お昼ご飯を食べてお金を払っても、それが今後お金として回収される見込みはゼロです。じゃあ経費じゃないよな、と考えることができます。

売掛金/売上、仕入/買掛金 の仕訳は簿記の例外

最初のほうに習う三分法(しーくり、くりしー)が、簿記をわからなくしてしまう原因です。
これは、手間を省くための便宜的な仕訳であって、簿記の考え方としては例外・応用に属するものです。

応用からやるので、なんとなくわからないまま簿記の勉強をすることになってしまいます。

商品販売の本質を表す仕訳は、売上原価対立法です。

さきほど、簿記は、取引による財産と利益の動きを同時に計算していると書きました。

三分法の売上・仕入の仕訳は、利益が計算できていません。しーくり・くりしーをして、最後に利益が計算される仕組みとなっています。

でも、本当は、売上げた時点で利益が計算できていないと、複式簿記とはいえないのです。
売上と同時に利益を計算する方法が、売上原価対立法です。

売掛金/売上 1,000
売上原価/商品 400 → 売上ー売上原価=利益 600

売上を上げるために、商品が出て行ってしまうので、売上と同時に費用が発生し、商品の在庫が減る。
慣れないうちは、この仕訳で考えて、取引による財産と利益との変化を把握しましょう。

仕訳帳と総勘定元帳以外の帳簿が存在する

解答を書くときは、最終的に仕訳帳・総勘定元帳・合計残高試算表の形になっているから、まるでこれらの帳簿しかないように見えてしまいます。

でも実際にはその外側に、さまざまな帳簿があります。

そういった、主要簿以外の帳簿の数字が動くから、仕訳を書く必要が出てくるのです。
仕訳だけが動くことはありません。

仕訳は金額しか書きませんが、それと同時に、モノの数量も動いているのです。

でも、そのモノの数量や、単価は、仕訳帳にも総勘定元帳にも載ってこない。
商品販売なら、商品有高帳に載っています。

つねに、他の帳簿の存在を意識することで、仕訳だけ書いて有高帳を書き忘れるとか、その逆を忘れるミスを防ぐことができます。


今日の図書館

  • 子どもに付き合って、地元の図書館へ
  • ロールパンナちゃんが、メロンパンナちゃんの「おねえちゃん」として、「後から」つくられて、その際に「悪の心」を埋め込まれてしまい、それを抑えられるようになるまで、いもうとと行動を別にする、というビターエンドな紙芝居を読んでしびれました……
  • あと、中学校の教科書(図書館に所蔵している)の「走れメロス」を読んで、一文字の隙もないその完成度にしびれました……何度読んでもかっこいい短編小説です
  • ジャンプの「友情・努力・勝利」の原型って、メロスだよな、と思います……