子が海外に住んでいる。相続税はどうなりますか?

自分の息子や娘が国外に定住し、仕事をしていて、日本にいない、ということもふつうのことになりました。

アメリカ、シンガポールで働いている、というのをよく聞きます。海外出張で一時的に外国にいるのではなく。

Q. 「自分はずっと日本に住んでいて、持ち家がある。将来は外国で働く子どもたちが相続するのだろうが、日本では住まないだろう。子どもが外国に住んでいると、相続税に何か変わりがありますか?」

というご質問に、ざっくりお答えします。

実は子が海外にいても、相続税の違いは少ない

A. ほとんど変わりはありません。(障害者控除が受けられない、小規模宅地等の特例の扱いが若干異なる、くらい)

日本にお住まいのご本人様(親御さん)がお持ちの財産を、子が相続すると、子の資産が増えるので、日本の相続税がかかります。

ご子息・ご令嬢が日本国籍を持たなくなっていたとしても、変わりません。

ご本人様の財産であれば、日本にあるものも、外国にあるものも、相続税の対象です。

その一方で、日本に住所がある子と同様、財産から、債務・未納の税金・お葬式の費用を相殺できます。

親子ともども、出国して10年以上経つ場合には、日本にある財産にだけ課税されるなど大きく変わりますが、この条件を満たすのはかなり例外的なケースです。

外国に住む子が財産を相続しても、障害者控除が受けられない

障害を持つ子が財産を相続すると、その財産を子の今後の生活に充てる必要があるため、相続税が軽減される「障害者控除」という制度があります。

しかし障害者控除は、外国に住所がある子(非居住無制限納税義務者)は利用できません。

障害者の子が国外にいらっしゃる場合には、注意が必要です。

配偶者に先立たれ、自分もいなくなると空き家になる予定の場合

持ち家・一人暮らしの人(要介護・要支援で老人ホーム等に入居している場合も含む)に相続が発生すると、もう住む人がいなくなり、空き家になります。これを空き家のままにしていた場合。

そこで、子が日本にいるか、海外にいるかで、小規模宅地等の特例(ここでは実家の評価額を80%下げられる)が使えるか、使えないかの判断が変わります。

いわゆる「家なき子特例」を使う場合です。持ち家のない子が、空き家を相続した場合に、土地にかかる相続税を下げられます。

日本に住んでいる子が空き家を相続した場合、その前3年間に、配偶者や3親等以内の親族の持ち家に住まわせてもらっていたことがある場合、その子は家なき子特例を使えません。

一方、親族の持ち家が海外にある場合は、空き家を相続したときに特例を使えます。外国にいると使えるケースが広がるわけです。

ただし、外国に住む子が、外国の不動産を買って住んでいる状態で、親御さんの相続を迎えると、特例が使えません。その不動産をいったん売ってリースバックしても、一度所有していたことがある物件だとダメです。

外国の賃貸物件に住んでいる状態で空き家を相続し、10カ月間(相続税の申告期限まで)売らずにいれば、利用できます。

相続税の試算をする場合、国外居住の子の状況をよく確認しておく必要があります。そういったご相談も、お受けしています。

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