「節税になるから日当を出す?」、その順番じゃなくて!(悪用してしまわないための考え方)

空港にて…謎の金色のANA

法人の社長さんでしたら、「節税になるから日当を出そう」みたいな話を聞いたことがありませんか?

いわく、「出張者に日当を出すと、それは個人でも課税されないし、法人でも経費になるから課税されない」。

役員・従業員個人に課税されないフリンジ・ベネフィットというものは、あることはあります。

でも、「節税になる→日当を出す」は、順序が変だと思いませんか?

税金の前に、会社の事業がありますよね。

個人で課税されないのは、その分法人で課税されるから

ある支出が、個人に課税されず、法人に課税されるものとして、交際費等があります。

贈答品をもらった取引先の個人は課税されず、贈答品を買った法人は、交際費が経費になりません(大企業の場合)。

贈答による所得を把握するのが難しい個人の代わりに、法人に課税しているので、課税の公平が保たれていると考えます。

日当も、これとは違う形で、日当を出すことによって、法人に課税されるのです。その理屈は以下のとおりです。

出張旅費をいちいち実費精算すると、経理部や総務部の手数がかかって、部員が残業してしまう。残業代を払うと、法人の利益が減ってしまいます。

そこで、実費に近い概算額を一律で出張者に支給することで、会社を効率化・ひいては残業代を削減し、会社の利益をアップすることが、「旅費規程による日当」の趣旨なのです。

会社は、利益を上げるための存在なので、そうなります。

日当を払うことで、会社の利益がアップし、結果として法人税の税収がアップする。

なので個人のほうは、多少、その概算額が手元に残ったとしても、目をつぶって課税しない取扱いになっています(所得税基本通達9-4の逐条解説)。

これは、別に私の私見ではなくて、外国でも、「税法が複雑すぎて従業員の残業時間が増加し、法人税の納税額が減ってしまう! だから制度を変えてもらえないか」と業界団体が訴えて、制度の簡素化を勝ち取った例があります※。

※アメリカで、税務上認められていなかった売価還元法を、税法上の棚卸資産の評価方法として認めさせた運動。この法律が日本に輸入されて、日本でも売価還元法が認められている。

制度を悪用しないことをおすすめしています

利益を上げるための会社が、過大な旅費日当を支給して会社の利益を減らし、個人に無税で移転させようなんて、ふつうは思うはずがありません。

ふつうでないことをすると、のちのち問題になります。利益が少なければ銀行はお金を貸してくれないし、税務調査で個人にも想定外の課税が及ぶ可能性があります。

その際、税金どころか追加の税理士報酬を払うはめになるかも……と合理的に考えれば(会社の利益を減らさないようにと考えれば)、課税しない取扱いを悪用するリスクを負う必要はないと思えるのではないでしょうか。

ちなみに国家公務員等の旅費に関する法律は改正予定です

出張旅費規程を作成するにあたり、国家公務員等の旅費に関する法律の別表を参考にしている会社もあるのではと思います。

しかし、この法律、2025年4月に改正が予定されています。

別表で等級ごとに一律の金額を定めるのではなくて、原則実費支給とし、別途上限額を規定するように変わる予定です。(以下、資料)

これを機に、貴社の旅費規程も見直しをしてみてはいかがでしょうか。

そもそも、インバウンド以降、ホテルの宿泊費は人気観光地を中心にどんどんアップしており、また物価高を背景に、接待飲食費が一人当たり1万円以下に改正される等、日当(食費・宿泊料の一律概算額)が時代に合わなくなってきていませんか?

概算支給を継続するにせよ、システムの導入で実費精算に変えるにせよ、税金がどうこう以前に、会社の効率化という観点から、旅費規程や運用を見直してみましょう。


今日の効率化

二要素認証を必要とするサービス、べつにいらないかなと思って外してみた。これで資金を動かせるわけではなし。いちいちスマホを見る時間がもったいなかったですね……。