もらった請求書が間違っていても、再発行してもらわなくていい場合(インボイス)

ないとはいえないのが、もらった請求書が間違っているというケースです。

納品書と突き合わせたら数が違うとか、値引きや返品が反映されていないとか。

食品を仕入れたのに税率が10%になっていたせいで、代金の総額が多すぎるとか。

こういうのは先方に連絡して、再発行してもらうべきでしょう。

そうではなく、消費税(インボイス)に関するちょっとした間違いなら、再発行の依頼に及ばない場合もあります。

連絡するの、面倒ですからね。

もらった請求書の消費税関係が間違っていた場合の対処をまとめました。

自社が2割特例や簡易課税の場合

  • 自社がインボイス登録をきっかけに初めて消費税を納める会社になり2割特例を使う場合
  • ずっと簡易課税で消費税を納税している場合

もらった請求書の消費税関係の表示が間違っていても、インボイスの登録番号がなくても、自社には影響ないので、何もしなくていいです。

老舗パン屋さんや喫茶店でもらったレシート、税率がいまだに5%だったりしますが、代金そのものが間違っていなければOKです! 連絡する必要はありません。

一般課税だが、売上がずっと1億円未満の場合

  • 簡易課税は使えない年商
  • 年商1億円未満が続いている
  • 請求書の合計額が税込1万円未満
  • 2029年9月以前の取引

上のぜんぶを満たす場合、「少額特例」の対象となります。

インボイスかどうかはチェックする必要ありません。したがって「インボイスになってないよ!」と連絡する必要はありません。

簡易インボイスだった場合

  • Tで始まる登録番号がある
  • レシートや領収書の宛名欄が空欄
  • 税率だけ
  • 税額だけ

だった場合。その発行元が、次の業種であれば、それは「簡易インボイス」です。再発行の連絡をする必要はありません。

  • 小売店
  • 飲食店
  • 写真館(証明写真機は、インボイスでなくてもOK)
  • 旅行代理店
  • タクシー
  • 時間貸し駐車場
  • 通販サイト
  • ホテル
  • 航空券
  • レンタカー
  • 宅配サービス
  • 会員向けセミナー
  • その他、宛名がないのが「ふつう」な、不特定多数向け販売・サービス

簡易インボイスじゃなかった場合(連絡が必要)

もらった請求書や自社の状況が、ここまでの内容にあてはまらなかった場合は、連絡が必要です。

こっちで見れば、請求書の記載内容をどう直せばいいかすぐわかる場合は、

  1. まずこっちで請求書を直してしまう
  2. 直した内容を電話かメールで連絡してOKをもらう
  3. その請求書に「〇月〇日先方チェック済み」とメモ
  4. 「次回の請求書からは正しいものでお願いできますか」と先方に依頼

という対応を取ってもいいですし、原則に立ち返って、

  • 正しい請求書を再発行してください

でもいいです。相手との関係性で、やりやすいほうでOKです。

そもそもインボイスじゃなかった場合

  • Tで始まる登録番号がない(インボイスではない)
  • 金額が軽減8%、10%に分かれていない
  • 内容についても、見れば食品だから軽減税率と分かるけど、そのマークがない

というときは、自分で食品だけ集計して軽減8%の金額を出し、合計額との差額で10%の金額を計算して、請求書にメモしておけばOKです。

この2項目だけの修正の場合に限っては、先方に連絡する必要はありません。

こっちで直して、そのとおりに会計データを入力しましょう。

この2つのほかにも間違いがあれば、こちらで修正して先方の確認を受けるか、先方に請求書の再発行を依頼します。

課税仕入れが正しいと思うけど、先方が不課税にしている場合

これは、インボイスとはちょっと違うのですが、請求書や領収書の発行元が、以下のような場合に生じるケースです。

  • 組合
  • 業界団体
  • 同業者団体
  • 自治会
  • 協議会
  • 一般社団法人
  • 任意団体
  • 防犯協会
  • その他の〇〇協会

もともと、会費のようなものを払っていて、請求書に

「この会費は、消費税法基本通達5-5-3の適用により不課税です(課税対象外です)」

といったような記載がある場合、ちょっと注意が必要です。

経理をするときも、だいたい不課税の諸会費としてきたと思うのですが、その請求内容が、

  • 広告協賛(イベント用の施設やパンフレットに自社名や自社の広告を掲載してくれる)
  • 料金表と申込書が送られてきて、「そのサービス1件あたりいくら、その冊子1冊あたりいくら」で申し込んだものの請求額
  • 「2倍払えば2倍もらえる」というように、対価と給付されるものが連動している

だった場合には、それは、その団体が何と言おうと、「課税仕入れ」です。

※こういう団体は、インボイスを発行していないことが多いので、2029年9月までは、課税仕入れで消費税の80%/50%控除が取れます。

このあたり、会費などを払う側でも勘違いしている会社が多いのですが、「非営利団体に払う費用だから、消費税が非課税(不課税)なのではありません。

請求書の記載の名目上、「○○会費」、「寄附金」などとなっていても、モノやサービスの対価であることが申込書などで確認できる場合は、実態に応じて課税仕入れで処理します。

請求書記載のとおり、不課税でOKな場合とは

その団体に入会しただけで、必ず払う通常会費(それで会報が送られてくる)は、会報の対価に見えます。

でも、通常会費が団体そのものの運営費の分担金と考えれば、特定のモノやサービスの対価とはいいがたい。

そういうものには、請求書の「対価性がないものとして不課税です」の文言が有効で、経理も不課税でOKです。

なお、このような場合でも、先方への連絡は必要ありません。

自社の判断で、正しく消費税の課税区分を設定しましょう。(親切に教えてあげてもいいですが)

判断に迷われた場合、私も税理士なので、ちょっとしたご質問にお答えしています。→単発相談 – 木村将秀税理士事務所 (kimurazeirishi.com)

今日の出先

特定非営利活動法人 税理士による公益活動サポートセンター (koueki-sc.jp)