法人税がかからない非営利団体の収益事業に法人税がかかる理由

非営利型一般社団法人・一般財団法人、(認定)特定非営利活動法人、法人格のない任意団体は、収益事業を行う場合、公益法人等として法人税が課税されます。

「非営利なのに、何で法人税が?」と思うところです。

「非営利」ってどういう意味?

これらの公益法人等が非営利団体と言われるのは、その利益を構成員に配当しないからと説明されます。

公開されている定款を見ると、「法人の解散時には、その財産は国庫に帰属する」などという定めがあります。

これが、利益を構成員(法人の「社員」…会社の株主のイメージ)に分配しないという一つの例です。

  • 非営利団体は、配当しないから、非営利とされて、法人税がかからない
  • 営利団体は、配当するから、営利とされて、法人税がかかる

一見、説明されたようなそうでないような、腑に落ちない気持ちになると思います。

法律には書かれていない、原則的な考え方を前提としているので、分かりにくいのです。

それは、すべての税金は個人の税務上の純資産の増加にかかるというものです。

個人以外(法人)にかかる税金は、あくまで仮のものです。

法人に貯めた利益を、個人に配当するなり給与として払うなりして、個人がもうかったときに最終的な課税がされます。

もし、そうではなく、法人がいつまでも利益を貯めつづけ、配当も給与も払わなかったらどうなるでしょう?

会社の純資産はどんどん増えつづけ、その株主はどんどん豊かになっていきます。

本当は、その会社の持ち主である株主の財産(株式の価値)がどんどん上がっているのに、それを個人に移転しないというだけで、税金が回避されていいのでしょうか?

原則として、その株の値上がり益に所得税をかけるという法律はありません。

値上がりした株が、個人から個人へ相続されれば、その価値に応じて相続税をかけることができますが、当初の株主の死亡まで課税を先送りされることになります。

所得税も、相続税・贈与税も、個人の税務上の純資産の増加に税金をかけるという意味では同じものです。

非営利=個人に利益が移転しないので法人税がかからない

本当にそれでいいのか。お給料だって、払うつど源泉徴収されて、毎月(あるいは半年に一度)、納税されますよね。

国家公務員のお給料だって、役所が借りている事務所の家賃だって、毎月出ていくのですから、そんな、数十年に一度しか納税がなされないと、国の資金繰りが厳しくなってしまいます。

そこで、年1~2回は、法人の税務上の純資産の増加に応じて、税金を払ってくださいね。というのが、法人税です。

最終的にその利益が法人から個人のものになったときに納税するのだけれど、その前払として法人にも定期的に納税してもらうものです。

配当をもらって総合課税で申告すると、配当控除というのが受けられて、所得税・住民税が安くなりますよね。

これは、法人で前払した税金相当の金額をざっくり引いているのです。

また、株式を相続した場合も、その価値から純資産増加にかかる法人税相当額を引いています。これも似た考え方だととらえることもできます。

これを全部反対にいうと、非営利法人は、配当しないので、その法人の純資産の増加が個人の純資産の増加に資することがなく、原則として所得税も相続税も課税されることがない。

だから、個人の税金の前払としての法人税を、かける必要が原則として、ないのです。

「原則として」が多いのは、この性質を利用して税逃れをする例があったので、例外的に税金をかける仕組みがあるからです。

収益事業に法人税がかかるのは、上記とはまったく違う理由

原則法人税がかからない非営利法人を支配していたら、その非営利法人を利用して、お金儲けをする、というのもすぐ考えつきそうなアイデアです。

とうに二次大戦前後からそのようなことが行われていたので、これには1950年から法人税がかかるようになりました。

お金を稼ぐために行う収益事業は、営利法人の事業と同じ。

もしこれが非営利法人にだけ法人税がかからず、営利法人にだけかかったら、営利法人は「不公平だ!」と叫びたくなるはずです。

なので、非営利法人が、営利法人と競合する事業をやったら、営利法人との競争上の公平を確保するために、法人税をかけるようにしました。

これがこの法律の意味、趣旨、保護法益というものです。

なので、収益事業(法定の34業種)に該当すれば、それが非営利団体の主目的である公益(みんなのため)の事業であろうがなかろうが、法人税がかかるのです。

非営利かどうか、公益のためかどうかは、ここでは問題になっていません。営利法人との競争条件が平等かどうかが問われているのです。

税金の中立性の表れの一つといえます。

では何が収益事業の判断基準か?

判例では、次のようになっています(物品販売業を前提)。

  • その事業で、物の代金としてお金を受け取っているか
  • その事業が、営利法人も行っている事業と競合するか
  • その事業が、物品販売業という姿かたちをしているか

競合するという観点でいうと、営利法人はその事業を継続してやっているという前提で、非営利法人も継続してやっていると競合します。

しかし、この基準で判定して収益事業となった場合でも、業種によっては法人税のかかる対象から除外されます。

除外されない場合でも、結局利益が出ていなければ、法人税は結果的にかからないこともあります。

また、物品販売業となると、消費税も関係してきます。

収益事業を行っているということになると、法人市民税・県民税(都民税)の減免も受けられなくなります。

論点は非常に多いです。

公益法人等に該当する方からの、単発のご相談も承っています。

編集後記

今日は初めて、立教大学池袋図書館を利用。

金子宏『租税法』が第6版から第24版まで並んでいるのを見るのは圧巻でした……。

あとは立川のゲームセンターWILLで、斬サム・フリープレイ対戦会に参加。