消費税をずっと納めている中小企業ですと、だいたい「簡易課税」で計算している方が多いと思います。
特に、サービス業や、不動産賃貸業の方。
ほとんどの場合、原則的な計算方法である「一般課税」よりも、納める消費税額が少なく済むので、そのことを「益税」と言ったりします。
もっと小規模な会社だと、免税事業者で、消費税相当分としてもらったお金のことも「益税」といいますが。
今回は、消費税は納税しているが、益税もある、という会社のお話です。
会計の世界では、すべてのことを2つの面から説明できる
益税というからには、もうかっているわけです。利益に貢献します。
消費税分として収入があるけれども、原則的な方法で計算するより、納税額は少なくなる。その、キャッシュの減少を防いだことについて、利益が生じます。
利益が生じるので、その分には、実は所得税(法人なら法人税)がかかってきます。
しかし、益税にかかる所得税などを差し引いても、消費税の納税額の減少額が上回るので、やっぱり得なのです。
これが、利益の側から見た益税です。これは会計の話なので、資産・負債の面で説明することもできます。
簡易課税では、仮払消費税等は売上だけから計算する
簡易課税の何が簡易なのかというと、売上のデータだけから、消費税の納税額を計算のが簡易なのです。
一般課税では、収入額の一部である仮受消費税等から、支出額の一部である仮払消費税等を引いた額が、おおむね納税額となります。
しかし、簡易課税では支出額に含まれる消費税は一切無視します。経理処理上は、資産である仮払消費税等が出てきますけどね。
売上の種類に応じて、収入額×10/110(仮受消費税等)の一部(1割から5割まで)を、税務上の仮払消費税等として計算することができるのです。そして、納税額も、税務上の仮払消費税等をもとに計算します。
これを、支出額×10/110(会計上の仮払消費税等)と比較すると、だいたい、さっきの税務上の仮払消費税等(売上から出した額)のほうが金額が大きくなります。
つまり、会計上の仮払消費税等(資産)が、実際の納税額に直結する税務上の仮払消費税等に不足しているので、会計ソフトで仮払消費税等(資産)の金額を増やす処理をします。それが、
借)仮払消費税等 ××× 貸)雑収入 ×××
となって、資産と利益が増えるのです。これを月次決算で計上しておくことで、本決算のときに突然益税が多額に計上されて、「えっ、こんなに利益が出るんだったら、もっと対策したのに!」と思うことを防げます。
税込経理方式の簡易課税による益税は
以上は、税抜経理方式(むずかしい方)の話で、より簡単な税込経理方式では、次のように計算します。
税込経理方式とは、収入額に含まれる消費税分も売上として(税抜経理方式より多めに)計算し、あとから納税した実際の消費税を費用で落とすことで、利益を計算する方法です。
税込経理でも益税はあるのですが、税込売上で多めに計上済みと考えて、利益を増やす計算ではなく、納税額を見込む方法で利益を適正化していきます。
今期の利益をちゃんと計算しようと思えば、来期に申告する消費税額を、
借)租税公課 ××× 貸)未払消費税等 ×××
で未払計上し、今期の売上に応じた消費税の納税額を、今期の費用に含めることになります。
これも、期末に1回だけ消費税の計算をすると、問題が起きます。
税込収入を売上に計上している以上、期中の利益が過大になっているのですが、気づかずに「今期は利益が出ているなあ」と安心してしまいます。
それなのに、期末に多額の 租税公課/未払消費税等 が計上されることで、いっきに赤字になってしまったりするのです。
これでは、まともな経営判断ができなくなります。
そこで、年1回ではなく、毎月、消費税の納税額を、費用として取り込んでおくことにします。
例えばサービス業でしたら、預かった消費税額の5割を納税するので、税率10%の場合、「税抜」売上金額の5%は納税されるので、費用(租税公課)に計上すべきとなります。
税込売上÷1.1×(10%-10%×5割)=租税公課
略すと 税込売上÷1.1×5%=租税公課 を、毎月計上していきます。
売上の中に、固定資産の売却があれば、5%を4%にします。売上の区別はする必要がありますね。
消費税を納める会社は、月次のもうけの把握も一工夫必要です。単発相談でも、経理でやるべきことをお伝えしています。
今日のできこと
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