税務調査で確認されるのが、期末在庫です。
決算書の貸借対照表に、棚卸資産が載っていれば、最初の電話連絡のときに、「棚卸の資料の用意をお願いします」と言われます。
棚卸資産というのは、一般的には、仕入れた原材料や商品のことです。
棚卸資産は、実物の数量×単価(税抜経理の場合は税抜)で計算した金額ですので、モノを数えたときの記録と、単価のわかるもの(棚卸表)を要求されるわけです。
でも、モノを扱わない IT ・ソフトウェア開発でも、棚卸資産は載ります。
載っていない場合、本当にそれが正しいか確認しましょう。
棚卸資産に載っていない場合、税金少なすぎの指摘を受けるかも
税務調査で、ソフトウェア会社の棚卸資産を確認されるのは、それがあるべきなのに、ない場合、経費が多すぎるという指摘ができるからです。
ちゃんと原価計算をしていたり、じっさいに納品は期末までにすべて完了していれば、問題はないのですが。
今期末までに検収・納品が済んでいないものは、まだ請求書も出せませんので、売上にもしていないはずです。
一方、人件費については、毎月払った時点で給与手当等として、すべて費用にしている。外注費も、毎月請求書が来た時点で費用にしている。
このように、製造原価報告書= C/R を作成していない場合は、これらは、期中の試算表ではコストになっています。
でも、売上が 0 円なのに、それに対応する人件費・外注費だけコストにするのは NG です。利益と税金が減りすぎてしまいます。
未検収の仕事にかかった人件費・外注費が棚卸資産に
この場合は、決算にあたって、未検収の開発に携わった社員の人件費・外注費を、棚卸資産(仕掛品)に計上する必要があります。
- 未検収の仕事に従事中の社員の人件費(給与・賞与・法定福利費)を、決算日まで計算(月末締めでない場合、月末までの分も)
- その従業員がその未検収の仕事に従事した日数÷総従事日数 で、 1. の金額を按分
- その未検収の仕事を外注した外注費は、全額
- 2. と 3. の金額を、人件費や外注費から仕掛品に移す
また、外注費以外でも、何かその未検収の仕事用にモノを買っていた場合も、消耗品費ではなく、仕掛品にします。
仕掛品の計算の根拠となった資料は、きちんと残しておきましょう。税務調査のため、というより、自社の利益を正確にするために。
もし仕掛品がないことを指摘されても、翌期の経費になる
もし、本当は未検収があったのに、単純ミスで仕掛品ではなく経費のままにしていて、税務調査で指摘されれば、修正申告をせざるを得ません。
その、仕掛品にしなかった費用×税率分、税金を追加で納め、遅れて納税することによる割増の税金(加算税)も払います。
とはいえ、その仕掛品にしなかった分は翌期の経費になるので、加算税の分だけ損した、という扱いになります。
仕掛品にすべき金額は、数百万円規模になることもめずらしくありません。
調査対象の年度の利益が少なすぎたことになり、対銀行のイメージも、もったいなかった……ということになります。
特に受託・人材派遣をする側としては、人件費・外注費の支払いが先行しがちなので、対税務署・対銀行ともに、正確な処理をしたいものです。
税理士は、プログラマーを抱えている会社さんからの相談にも応じています。単発でも、顧問税理士としてでも。
昨日の税理士会の会務
総会の書類の校正作業を。 3 つミスを見つけたので、よかった……。