現実的な簿財同時学習法(税理士試験対策)

税理士試験の簿記論・財務諸表論の同時合格は、できると嬉しいものです。

かといって、学生の方でなければ、おすすめしにくいところではあります。

現実的には、簿記論か財務諸表論かのいずれかを前回学習していて、受験済みであることが望ましいです。

そうであっても、一方の勉強が忙しくて、他方の時間がとれず、その科目と疎遠になり、やる気をロスしがちです。

そうすると、問題集を開かなくなったり、講義に出席しなくなったりします。やりきれないから、一種のあきらめが出てしまうのです。

そして、講義に出席しない・勉強しないことが習慣づけられてしまうと、同時合格は遠のいてしまいます。

対策:財務諸表論の勉強のしかたを変える

問題は、財務諸表論の講義の課題・問題集を、全部やろうとしてしまうことにあります。

そんなの、やりきれるわけがありません。問題がはっきりしたら、対策をします。

簿財同時学習中でしたら、財務諸表論の勉強量をぐっと抑えてみましょう。

財務諸表論の計算問題集は、簿記論の勉強をしていたら、ほとんど解く必要がありません。

次の項目だけ解けば十分です。

  • 貸借対照表の流動・固定分類の問題
  • 注記の問題

計算はこれだけでOKです。あとは、簿記論の知識で解けます!

計算問題集を受け取ったら、ぱらぱら眺めてみて、この二点に関する問題がなければ、二度と開かなくていいです。私も、財表は一度も開いていない問題集が何冊もありました。

その代わり、新しく習った項目のB/S上の流動固定分類と、注記の問題は、一回は解いておきましょう。あとは毎月の確認テストや、直前期の模試のときに復習すればいいと考えましょう。

財務諸表論らしい形式の問題に対応するには、同様に、確認テストや模試を解くだけで充分です。

理論テキストについても、真面目に暗記する必要はありません。講義には出席して、講師の話は聞いておく必要はありますが、一言一句丸暗記しなければならないような問題は出ません。

市販の書籍を4冊読めば十分です。

  • 有斐閣アルマ『はじめて出会う会計学 第3版』
  • 有斐閣アルマ『財務会計・入門 第17版』
  • 中央経済社『財務会計講義 第24版~』
  • TAC出版『財務諸表論 重要会計基準』

読み方としては、上から下に向かって難しくなっていきますので、上から順に読みます。目からの読書と、耳からの講義、そして計算問題の練習によって、自然に理解が進んでいきます。

2冊目までは、1~2回読めば十分です。簿記論の勉強+講義の聴講ができていれば、難しくありませんので。

『財務会計講義』の読み方

問題は3冊目の『財務会計講義』です。予備校のテキストも、本試験問題も、ほぼこの本から作られているといっても過言ではありません。

それゆえに難しいです。いきなりこれを読んでも、分からないと思います。そこで、有斐閣アルマによる段階を踏んだ読書が必要なのです。

さらに、この本の読み方にはコツがあります。次の順番で読んでみてください。

  1. 第4章「利益測定と資産評価の基礎概念」
  2. 第1章
  3. 第4章
  4. 第2章
  5. 第4章
  6. 第3章
  7. 第4章
  8. 第5章
  9. 第4章
  10. 第6章 … 以下同様

つまり、第4章を読んで、その次に他の章を読み、また第4章に戻ってきて、他の章の続を読みます。

第4章が、最も基礎の内容なのです。第4章の内容が、他の章にどのように関連しているのか考えなら読むことが、会計理論の理解に役立ちます。

この方法は、私のオリジナルではなくて、いまはなき受験雑誌『会計人コース』(中央経済社。現在はWeb版のみ)で財務諸表論の連載をしていた大学の先生が紹介していたものです。

第4章を何度も読んだ結果、その内容を自然に憶えてしまいます。

このメリットは、実際の本試験でよく分からない問題が出ても、第4章の内容にもとづいて、その問題に近いものを書くことで、十分得点が狙えるようになることです。

私の受験時に「のれん」が出題されたとき、「これは、第4章の『純実現可能価額』の話に近いな!」と思い、その記述に沿って、解答欄の最後の行まで書きました。

また、この読み方で最後の章まで読んだ後、また最初の章から同じ方法で読み直します。メモや下線を引きながら。

本試験までに7回程度通読し、その理解をもとに確認テスト等でアウトプットを繰り返せば、理論問題を自分のものとすることができます。

『重要会計基準』の読み方

ただし、『財務会計講義』だけでは足りない栄養素があります。それが、「会計基準」の本文と、「結論の背景」です。

この文章をもとに穴埋め問題が出題されますが、この基準などの文章そのものは、『財務会計講義』には一部しか出てきません。

また、会計基準と結論の背景は、離れた場所に置かれているので、原文で読むのは非常に効率が悪いです。

そこで、TAC出版の『財務諸表論 重要会計基準』を使います。会計基準の直後に関連する結論の背景が置かれていますので、効率的に学習できます。いちおう赤シートもついているので、穴埋め問題の練習もできます。

この『重要会計基準』も、『財務会計講義』と並行して7回程度通読(メモ・下線)することで、暗記と理解は十分かと思います。

もちろん、予備校の講義はすべて出席して、耳からも聞いておくことが重要です。それに+αして、重要な本を繰り返し読む。

最後、本試験直前10日間ほどで、過去問の理論問題10年分を解いておけば、理論の対策は万全です。

財務諸表論の出題予想について

これは余裕があったらですが、日本経済新聞(日経新聞)をチェックしたいところです。ときどき、会計基準に関するニュースが掲載されるからです。

そして、このニュースに関連した時事問題が、本試験で出題されることがあります。

時間のない方は、ときどき日経電子版サイトを「企業会計基準委員会」で検索をしてみてください。最新の会計基準の改正のニュースが出てきます。ここで上がっているテーマにヤマをはっておきましょう。

いまだと、リース会計基準ですかね。

また、パナソニックなど日本を代表する企業の決算記事で、大幅な黒字・赤字が出てニュースになり、それが特定の会計基準によるものであれば、それもチェックしておきます。

パナソニックが繰延税金資産の取り崩しで大赤字になったというニュースが出た年の本試験で、繰延税金資産が出ました。その翌年は会計基準のニュースで繰り返し出た話題が「のれん」だったので、そこにヤマをはっていたら、やはり出題されました。

具体的には、手持ちの問題集や理論集のそのテーマにマーカーを引いておき、本試験の開始直前に、そのテーマだけ読んでおく、という対策をします。これら以外のことも全部勉強したうえで、ヤマをはりましょう。

ちなみに、ヤマを貼った項目はマーカーしておき、本試験直前15分前にそこだけ読んで、受験を開始します。


今日のはじめて

上大岡 akafoo bowl