消費税の申告書を作るのが初めてとか、2回目の方の場合、申告書に間違いがないか、チェックしたいところです。
3回目以降の方であっても、1年に1回しか作らないので、「どうだったっけな?」となりがちです。
チェックポイントを紹介します。
前提としては、「税込経理」と「割戻計算」で申告書を作るケースです。
まずは仮の決算書を仮作成し、それをもとに消費税の申告書を作り、決算書に消費税の仕訳を反映させ、最後に法人税(個人の方は所得税)の申告書を作る、という順番で進んでいきます。
2割特例の消費税の申告書を作る場合
消費税を初めて申告される方なら、2割特例を選べば、自力で申告書を作ることも可能です。
消費税申告初年度の場合は、インボイス登録日から期末までの売上・売上値引き・貸倒れについて、会計ソフトで税区分のコードを入力します。
売上値引きは、キャッシュバックや返品、振込手数料を差し引かれて入金されたときの不足額が対象です。
ただし、値引き等や貸倒れのもととなる売上がインボイス登録日より前のものは、税区分「対象外」で処理します。
請求書上で最初からマイナスする出精値引き的なものは、値引き後の金額で課税売上として入力すれば十分です。
決算書上は、1年間まるまるの売上データが集計されますが、消費税の申告書では、インボイス登録してからの売上等を別に集計されます。
食品販売や新聞配達(軽減税率の対象)をされている場合には、売上・値引き・返品・貸倒れについて、会計ソフト上で軽減税率を分けて入力する必要があります。(そうしておかないと、余計な納税をしてしまいます)
消費税のかかる売上、かからない収入を区分しておきましょう。
コツは、消費税の税区分コードひとつにつき、ひとつの勘定科目を設定することです。
売上高は課税売上10%のみ、雑収入は対象外(不課税)のみ、というふうに。
最終的には、消費税の申告書の数字と、決算書との数字とを突き合わせて、矛盾がないことで間違いないことをチェックします。
そのときに、1税区分1勘定科目としておくと、決算書と一致しているか、消費税のほうだけ多すぎないか、などが分かりやすくなります。
最後に、消費税の納税額について、
租税公課(対象外)/未払消費税等(対象外)
の仕訳を入れて、決算書を完成させます。
税込経理の場合、消費税額が売上(所得金額)に含まれてしまっているため、追加で租税公課という経費を計上して、所得が多くなりすぎないようにするのです。
これは、次の簡易課税も同じです。
簡易課税の申告書を作る場合
基本的なチェック項目は、2割特例と同じです。
すでに2年前の課税売上高が10,000,000円を超えている方などは、簡易課税での申告になります。
チェックポイント一つ目は、事業区分は正しいかどうかです。
サービス業やNPO法人の収入は第5種ですが、会社の備品を下取りに出したときの収入は第4種になりますし、情報サービス業のつもりで自社制作の出版物を販売していたら第3種です。
これも適切に区分することで、納税額が最小になります。
ポイント2つ目は、やはり、決算書と数字が合うか、ということです。
簡易課税の場合には、会計ソフトでできあがった申告書に、事業区分別の売上高を表示する欄がありますので、この数値が決算書と一致するか、確かめておきましょう。
一般課税で還付申告をしたい場合
開業して間もない場合、開業準備費用で赤字というケースもあります。
この場合、2割特例か一般課税かを選ぶことができます。
簡易課税制度選択届出書を出していない場合、一般課税を選択することで、消費税の納税額を少なくしたり、還付を受けられたりする可能性があります。
その場合、経費の税区分を適切に登録することも必要ですが、最終的に勘定科目別の税区分一覧表を作ることになります。
確定申告書等作成コーナーでは、「事業所得(営業等)に係る決算額(税込)等の入力」を作りますし、紙で申告する場合は同様の「課税取引金額計算表」を作ります。
会計ソフトでも同様の資料は作れます。
ここでも、決算書の数字と合わせられるように経理をすることが重要です。
会計ソフトの勘定科目を、決算書上で規定の表示科目に集約している場合は、その関係が分かるようにしておく必要があります。
そのことで1勘定科目・1税区分の対応が崩れている場合はチェックが必要です。
また、購入時に全額課税仕入れにする棚卸資産や貯蔵品の決算整理も注意です。
期末に在庫となり、経費にならない金額があっても、購入額は全部課税仕入れになるので、仕訳に悩むかもしれません。
広告宣伝費(課税仕入れ)/普通預金(対象外)
これを貯蔵品に振り替える場合、課税仕入れを減らさないようにと、次のようにしてはいけません。(消費税額自体は、正しく計算されますが……)
貯蔵品(対象外)/ 広告宣伝費(対象外) ※ダメな例
正しくは、次のように入力します。(課税仕入れを減らし、同額を別科目で計上しなおします)
貯蔵品(課税仕入れ)/広告宣伝費(課税仕入れ)
こうしないと、決算書の広告宣伝費の金額と、消費税申告書の添付資料である勘定科目別の集計表の金額とがずれてしまうからです。
資産の部に載る棚卸資産や貯蔵品、固定資産も、課税仕入れの税区分コードがつくことを忘れないようにしましょう。
最後に、計算結果が還付申告になる場合には、「消費税の還付申告に関する明細書」を添付する必要があり、けっこう手間です。
次のようなデータを用意しておきましょう。
- 課税売上先 上位5社
- 売上の内容
- 譲渡年月日(または通年)
- 金額
- 取引先住所
- 取引先ビル名
- 輸出免税売上先 上位5社
- 取引先
- 取引先住所
- 取引先ビル名
- 金額
- 売上の内容
- 所轄税関名
- 課税仕入先 上位5社
- 仕入の内容
- 仕入年月日(または通年)
- 金額
- インボイス登録番号
さらに、税込経理の場合には、還付金額について次の仕訳を入れる必要があります。
未収入金(対象外)/雑収入(対象外)
そのため、仮決算書→消費税申告書→消費税を反映した決算書→法人税(または所得税)申告書 を作るという流れになっています。
編集後記
消費税の確定申告書等作成コーナーに自動入力するRPAを作る。その下ごしらえのデータ整形用テーブルをChatGPTに書いてもらい、OFFSET関数で入力用データを用意する、とかやってたら楽しくなってきた。